千葉大学の研究グループは、アサヒグループホールディングス株式会社との共同研究により、「りんごポリフェノール」が変形性膝関節症の進行を抑制することを、細胞および疾患モデルマウスを用いた試験により明らかにした。
変形性膝関節症は、膝関節の腫れや痛みを伴い、歩行が困難になるなど、生活の質を著しく低下させる運動疾患だ。関節において緩衝作用を担う「軟骨」が擦り減ることが主な原因であり、骨への負担が増加することで症状が悪化する。主な治療は外科的処置となっているが、近年の研究で、膝関節の軟骨細胞におけるミトコンドリアの機能低下が変形性膝関節症の発症と悪化に関連していることが見出され、ミトコンドリアを介した治療法の確立が有望視されている。
一方、りんごから抽出されたポリフェノールには、強い抗酸化作用があり、抗腫瘍、抗肥満、抗疲労など様々な効果を有することが報告されている。これらの生理機能が発揮される一因として、ミトコンドリアを介した作用機構が考えられている。
そこで本研究では、軟骨細胞におけるりんごポリフェノールのミトコンドリアへの作用と、変形性膝関節症に及ぼす影響について検証した。その結果、りんごポリフェノールは、軟骨細胞においてミトコンドリアの新生を促し、軟骨の構成成分であるプロテオグリカンの産出を促進することが示唆された。また、変形性膝関節症モデルマウスを用いた試験では、りんごポリフェノールがその症状悪化を抑制することが確認された。
本成果をもとに、将来的にりんごポリフェノールが変形性関節症の内科的治療に貢献することが期待される。