東京医科大学公衆衛生学分野の小田切優子講師ら研究チームは、2020年5月に日本人男女2,400人を対象にインターネット調査を実施。新型コロナウイルス感染症の流行前に医療機関を定期受診していた659人の受療行動を分析した。
新型コロナウイルス感染症の第一波流行中で、緊急事態宣言の解除が検討され始めた2020年5月。研究チームは関東地方在住の20歳から79歳の男女2,400人を対象に、医療機関の受療状況に関するインターネット調査を実施。対象者に「受診頻度の減少」「定期内服切れ」「持病の悪化」「電話・オンライン診療の活用」、そのほか受診に関する要因について回答してもらった。調査対象者のうち新型コロナウイルス感染症の流行前に外来を定期受診しており、内科慢性疾患で通院中の659人について解析を行った。
その結果、「受診頻度が減少した」人の割合は37.8%で、「医療機関で感染することが怖い」こと、「東京在住」「女性」などが受診頻度の低下と有意に関連していた。一方で、「定期内服ができなくなった」人の割合は 6.8%、「持病が悪化した」人の割合は5.6%だった。
また 電話・オンライン診療を活用した人の割合は9.1%。受診頻度が減少した人の割合に比べて、定期内服ができなくなった人の割合が少なかったことから、長期処方等で対応が行われていた可能性が考えられる。
受診に関する要因のうち「医療機関での感染恐怖」は「受診頻度の減少」や「定期内服切れ」と有意な関連を認め、さらに、要因間の分析を行ったところ、受診頻度の減少した人に、定期内服切れや持病の悪化が多かったことが明らかとなった。
今回の研究で、新型コロナウイルス流行下での受療行動の変化が明らかとなり、通院の中断や病状悪化を防ぐためには、受療行動が変化しやすい集団への配慮や、特に「医療機関での感染への恐怖」の払拭・低減に努め、新型コロナウイルス感染症の流行下でも受診を継続しやすい環境を整備することが重要となる。