2018年に発生した大阪北部地震の前に大気中のラドン濃度が減少していたことを、東北大学大学院理学研究科の長濱裕幸教授、武藤潤准教授らの研究グループが突き止めた。大阪医科薬科大学で観測されていたデータを解析した結果で、大きな地震前にラドン濃度が低下することを明らかにしたのは初めてという。

 東北大学によると、研究グループは大阪北部地震の震源地に近い大阪府高槻市奈佐原にある大阪医科薬科大学で観測されていた大気中ラドン濃度のデータを大阪医科薬科大学、神戸薬科大学と共同で解析した。

 その結果、大気中のラドン濃度は大阪北部地震の約1年前から減少し、本震のあと2020年6月まで低い数値で推移していることが分かった。大気中にあるラドンは地中のラドンが散逸したもので、地震で岩石や地盤に細かい亀裂が生じることで促進される。

 1995年の阪神大震災や2011年の東日本大震災では、本震前に岩盤に亀裂が生じたことでラドン濃度が上昇していたが、大阪北部地震で観測地周辺は本震前に地震活動が静隠化し、本震後の余震も多くなかった。このため、岩石や地盤が変形せず、地中のラドンが放出されないことで、大気中のラドン濃度が低下したとみられる。

 研究グループは大きな地震前後の大気中のラドン濃度の変化は地中の岩盤に生じる亀裂の有無に影響されると結論づけている。

論文情報:【Scientific Reports】Preseismic atmospheric radon anomaly associated with 2018 Northern Osaka earthquake

大学ジャーナルオンライン編集部

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