運動をより良くするためには、いかに予測誤差を検出できるかが重要となるが、これまでの研究では上肢運動課題に特化したものがほとんどだった。畿央大学の林田一輝 客員研究員らは、健常成人を対象とした歩行中の予測誤差検出実験により、歩行パラメータや身体の重量感、不一致検出率が遅延時間とともに増加し、これらのデータは観察の視点に依存しないことを明らかにした。
脳損傷後のリハビリテーションでは、動こうとしたときに脳が予測する感覚と、実際の感覚とのわずかなずれ(誤差)を認識できる能力がとても重要だ。これまでの研究では、腕や指の動きを使ってこの能力が調べられてきたが、実際に患者にとって最も必要とされる「歩行中」での仕組みはよく分かっていなかった。
研究チームは今回、歩行中の誤差を認識する能力について実験を実施。健常な人にトレッドミル上を歩いてもらい、自身の歩行中の動きが前方のモニターに映し出される際に、視覚フィードバックを段階的に遅延させて、その「わずかな遅れ」に気づけるかどうか実験した。
その結果、歩くリズム(歩行パラメータ:ステップ時間、ストライド時間)や自分の体の重さの感じ方、そして遅れに気づく割合(不一致検出率)は、映像の遅延が大きくなるほど高まることが分かった。さらに、自身の映像を横から見ても後ろから見ても結果は同じで、観察する視点に左右されないことも確認された。
今回の研究は、歩行中の患者の感覚運動統合機能を評価する方法を開発するための重要な手がかりになる可能性が考えられるとし、今後は脳卒中などの神経疾患患者への応用を行う予定という。
論文情報:【Psychological research】Sensorimotor incongruence during walking using delayed visual feedback
