九州大学などの研究グループにより、排便を制御する脳中枢の仕組みが世界で初めて明らかになった。

 近年、慢性便秘症患者は健常人と比べ、15年生存率が20%以上低いことが報告されており、長期の生命予後にも影響する疾患として注目されている。慢性便秘症の中でも、排便困難を呈する「便排出障害型」は、腸圧の上昇と肛門の弛緩による協調運動の異常が原因と考えられているが、その脳内メカニズムは解明されていなかった。

 本研究では、上位の神経細胞へと移動する性質を持つ「仮性狂犬病ウイルス」を利用した解析により、排便を司る脳中枢が、脳幹の橋と呼ばれる部位にある「バリントン核」に位置することを突き止めた。

 さらに、光刺激により神経を人為的に興奮させるオプトジェネティクスの手法を用いて腸管収縮の発生を調べたところ、バリントン核内の2種類の神経群が異なる役割を持って排便を引き起こすことが明らかになった。VGluT2神経は即時かつ非持続的な腸管収縮を起こして排便の開始に関与し、CRH神経はやや遅れて持続的な腸管収縮を誘導して排便の継続に関わるという。また、ファイバーフォトメトリー法によりこれらの神経活動をモニタリングしたところ、自然排便中にVGluT2神経とCRH神経が最大限に活動していることも確認された。

 さらに、視床下部室傍核や腹外側部水道周囲灰白質などの脳領域が、これらの神経の上位中枢として排便を誘発することも明らかになった。

 本研究は、中枢神経系がどのように排便を制御しているのかを最先端の神経科学的手法により明らかにしたもので、慢性便秘症や排便障害の病態理解を大きく前進させる成果である。今後は、慢性便秘症の新たな治療戦略の開発に貢献することが期待される。

論文情報:【Cellular and Molecular Gastroenterology and Hepatology】Barrington’s nucleus: a pontine defecation brain area exhibiting prompt and delayed defecation responses

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