奈良県立医科大学の田井義彬講師らの研究グループは、増加し続ける「入浴関連死」について、従来指摘されてきた高齢化だけでは説明できない実態を明らかにした。

日本では毎年およそ2万人以上が入浴中またはその前後に急死しており、特に65歳以上では「浴槽内での不慮の溺死」が世界で最も多いことが報告されている。本研究は、この深刻な課題に対して新たな予防策を検討するため、全国規模のデータを用いて解析を行った。

まず、1995~2020年に発生した約11万例の浴槽内溺死を分析したところ、死亡者数の増加は高齢者人口の増加ペースを上回っていた。これは、浴槽内溺死の増加が高齢化だけでは説明できず、他の要因が関与している可能性を示している。

次に日別の解析では、気温が低いほど死亡者数が増える傾向が確認された。さらに、浴槽内溺死のリスクは元日で3.59倍、祝日で1.23倍、日曜日で1.16倍と、特定の日に突出して高まることも明らかになった。

また、男性や高齢者ほどリスクが高く、温暖な地域ほど冬季のリスク上昇が大きい傾向も認められた。

これらのデータに基づき、研究グループは気象情報を用いて翌日の入浴危険度を予測するAIモデルも構築した。精度検証では、実際の死亡数と予測値が大きく乖離せず、一定の精度で再現できることが示された。将来的には、天気予報と連動した「入浴危険度予測ツール」としての活用が期待される。

加えて、奈良県在住の1,479名を対象とした生活環境データの解析では、室温や体表温度が低いほど、高温かつ長時間の危険な入浴をしやすいことが判明した。一方、外気温が低くても室温が高い環境、または室温が低くても体表温度が高い場合には、高温入浴を避けやすい傾向が見られた。これらの結果から、室温や体表温度を適切に保つ工夫が、入浴関連死の有効な予防策となり得ることが示唆された。

本研究により、入浴関連死の背景にある複数のリスク因子が明らかになり、救急・医療体制の整備や実効性の高い予防策の検討に向けた重要な知見が得られたといえる。

参考:【奈良県立医科大学】入浴関連死の予防に向けた新たなエビデンス ー 全国死亡データと実生活データにもとづく多面的研究 ー

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