広島大学大学院医系科学研究科の研究グループは、日本人成人の健康関連QOL(Health-related Quality of Life:HRQoL)が、過去7年間にわたり一貫して低下していることを全国規模のデータで明らかにした。
HRQoLは、疾病負担や生活の質を標準化した総合的評価指標として用いられており、健康・医療政策や地域施策の立案において有用とされる。近年、日本では高齢化の進行や労働環境の変化、慢性疾患の増加に加え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響など、国民の健康状態に影響を及ぼす要因が複雑化している。しかし、全国レベルでHRQoLの時系列推移を分析した研究はほとんどなかった。
今回の研究では、2017・2020・2024年度に実施された全国ランダムサンプリング調査「肝炎ウイルス検査受検状況調査」のデータを解析することで、COVID-19流行中を含む7年間のHRQoLの変化を比較した。解析対象は、20〜85歳の日本人成人のうち有効回答が得られた10,204人(2017年度)、8,810人(2020年度)、4,428人(2024年度)だった。
その結果、全国平均HRQoL値は0.9133(2017年度)から0.8977(2020年度)、0.8834(2024年度)へと、7年間で緩やかだが一貫して低下していることが示された。特に、男性では40〜69歳、女性では30〜59歳で統計的に有意な低下が認められ、就労世代でのHRQoL低下が顕著であることが明らかとなった。なお、この低下には「痛み/不快感」や「不安/ふさぎ込み」の影響が大きいことも示された。
また、経験的ベイズ法による都道府県別推定でも、ほぼ全ての都道府県でHRQoL値の低下が確認され、全国的に同様の傾向であることが示された。
COVID-19の流行前・流行中・流行後にわたるHRQoLを国レベルで比較した大規模研究は国内外でも例がなく、本研究は世界的にも貴重な知見を提供するものといえる。特に就労世代への健康支援策の検討に際し重要な基礎資料となると期待される。研究グループは、今後も継続的に全国のHRQoLをモニタリングし、その低下要因を分析していくことが重要だとしている。
