産学連携研究を実施している企業のうち、企業が1,000万円以上を支出する大型研究を進めているのが3割にとどまっていることが、文部科学省と科学技術・学術政策研究所の調査で分かりました。大学と知的財産権を共有する際の規定の整備が不十分であることも一因とみられ、規定の整備を急ぐ必要があるとしています。
調査はNISTEP企業名辞書から5,761社を抽出し、アンケート用紙を配布。解析可能な571社の回答を分析しました。それによると、過去3年間に大学と産学共同研究をした企業は46.4%ありました。従業員数1,000人以上、資本金10億円以上の大企業ほど産学連携の研究に積極的で、産業別では製造業が56.2%と非製造業の35.2%を大きく上回っています。
産学連携の研究をした企業のうち、1件1,000万円以上の大型研究に着手したのは30.2%。そのうち、ちょうど半分は国が関係するマッチングファンド事業(※1)を利用していました。
企業の協働相手先は事業展開上、リスクの低い相手を選ぶ傾向があるものの、国が関係するマッチングファンドであれば32.5%が協働する大学教員とつながりを持つ企業と共同研究することに前向きな姿勢を示しました。
大学との知的財産権共有については、企業の19.0%が研究成果を学会で発表されることを挙げたほか、発明者認定に時間がかかることや特許出願時期を調整しにくいことなどが懸念材料として示されました。今後、大型研究を推進するためには、こうした懸念の解決が不可欠とみられています。
※1 マッチングファンド事業 市民や企業、行政などが資金を提供し合う制度。大学と企業の共同研究や大学の研究者が特許を持つ研究の実用化を補助するために利用される。
出典:【科学技術・学術政策研究所】「大型産学連携のマネジメントに係る調査研究」[DISCUSSION PAPER No.127]の公表について