目の見えない人や見えにくい人を導く盲導犬は、すべての犬がなれるわけではない。遺伝性疾患がなく、かつ盲導犬に適した性格や血統を持つ親(繁殖犬)から産まれた子犬が候補犬となり、訓練と試験を経て初めて盲導犬となることができる。
しかし、訓練犬もすべてが盲導犬になれるわけではなく、3回にわたる評価(試験)過程で最終的に合格するのは全体の3~4割にとどまるという。合否を分ける違いは何か。日本獣医生命科学大学の研究グループは、遺伝的要因に着目して解析を行った。
九州盲導犬協会の協力のもと、訓練犬160頭を対象に、盲導犬として合格した犬65頭と不合格だった犬95頭のDNAの違いをゲノムワイド関連解析(GWAS)で比較した。その結果、第28番染色体上に位置する「SORCS1」遺伝子において、合格犬と不合格犬の間でわずかな違いが認められた。この遺伝子型が盲導犬の合格率と関連することが明らかとなった。
SORCS1は主に神経細胞で働くタンパク質輸送受容体で、神経機能や行動に関係すると考えられている。ヒトではアルツハイマー病や自閉症との関連が報告されているほか、アカギツネの研究では人へのなつきやすさ(順化)との関連も示されている。今回の結果から、犬においても、この遺伝子が盲導犬訓練成績に反映される行動特性と関係している可能性が示された。
犬の行動特性には遺伝的要因だけでなく環境要因も影響すると考えられるが、本研究は、盲導犬への「向き・不向き」を遺伝的観点から捉える手がかりを示したものといえる。成果の一部は特許を取得しており、今後、遺伝子情報を活用した犬の選抜や行動特性の判定が実用化されれば、より効果的な盲導犬の育成や合格率の向上につながることが期待される。
