京都大学の研究グループは、日本国内でスマートフォンが急速に普及した2014~2019年に、内斜視の発生率と手術件数が増加傾向にあったことを明らかにした。
近年、急に目が内側に寄り、物が二重に見えるようになる「急性後天共同性内斜視」が若年層を中心に増加していると指摘されている。スマートフォンの過剰使用(長時間の近見作業)との関連を示唆する症例報告もある一方で、スマートフォン普及と内斜視発症増加の相関を客観的データで示した研究はなかった。
そこで本研究では、日本のほぼ全ての保険診療情報を網羅する「匿名医療保険等関連情報データベース(NDB)」を用い、スマートフォンの急速な普及期(2014~2019年)における内斜視発生率の推移を調査した。
その結果、内斜視発生率は10万人年あたり32.26(2014年)から36.61(2019年)へ増加していた。また、内斜視に対する手術件数も3,061件から3,743件へ増加していた。他の要因の影響を完全に排除することはできないものの、内斜視発生率の推移は、スマートフォンの世帯普及率の推移と強い相関を示すことも確認された。
一方で、同期間にスマートフォン利用者が3,000万人以上増加したのに対し、内斜視の増加は10万人年あたり約4人と限定的だった。このことから、スマートフォンの普及が新たに内斜視を生み出しているというより、スマートフォンの利用をきっかけに、内斜視の先天的素因を持つ層で発症が誘発されている可能性があるとしている。
本研究成果は、デジタル機器の過剰使用が眼の健康に影響を及ぼす可能性について、大規模データによる客観的な裏付けを示した。「適切なスクリーンタイム」のガイドライン策定など、適切なデジタル機器利用を考える上での基礎資料になると期待される。今後は、個人のデジタル機器使用時間と内斜視発症との直接的な因果関係を検証する研究が求められる。
