大学を偏差値や知名度で選ぶ前に、自分が社会でどう生きたいかを考えてほしい――1665年創設の学寮を原点として、4学部体制に発展した大谷大学の木越康学長はそう語りかける。「Be Real 寄りそう知性―」というメッセージに込めた思いと、仏教教育を原点に有する大谷大学ならではの教育や進行中の将来構想について話を聞いた。

「ちゃんとしよう」に込められたメッセージ
大谷大学が掲げるタグライン「Be Real 寄りそう知性―」が誕生したのは、2017年のこと。若手教職員を中心とするメンバーが数カ月間にわたってブレインストーミングを重ね、大谷大学のイメージやありたい姿などを言語化しながら言葉を紡いだ。「Real」には仏教でいう「真実」と、目の前の「現実」という2つの意味が込められており、「Be Real」はそれらに足場を置いた上で本来あるべき人間の姿、あるべき社会を探究し、創造していこうという意味だ。
木越康学長は「もう1つの意味がある」という。
「ネイティブスピーカーに英語の表現として違和感がないかを確認したところ、突然笑い出したんです。『Be Realは小学校の先生が落ち着きのない子どもを叱る時に使う表現』なのだと。日本語に訳せば『ちゃんとしなさい』といったところでしょうか。世の中は争いが絶えず、人間は自然環境に迷惑をかけている。そんな社会にも、我々自身にも『ちゃんとしようよ』と呼びかけるメッセージは本学に合っていると思います」
東本願寺内に創設された学寮から始まった大谷大学は、開学以来の伝統を持つ文学部と、2018年開設の社会学部および教育学部、2021年開設の国際学部という4学部体制を敷く。新しい3つの学部と仏教との関係について、木越学長はこう説明する。
「仏教は本来、慈悲や利他といった社会的な表現の言葉を持ち、釈尊自身が『全ての人々の安楽のために行け』とおっしゃっています。社会学部は仏教的な理念を社会に表現する場、教育学部はそれを子どもの未来に託す場、国際学部は他者理解の上で世界を作っていく場。本学は仏教をそういった形で表現しているのです」
教育の根底には仏教の精神が宿る。その1つが「共苦」という考え方。これは共に苦しもうということではなく、苦しむ他者に目を向け、その苦しみを取り除くことに身体と心を使い、共により良い方向を求めるという意味になる。
「これこそが仏教的な慈悲であり知性ですが、無理やり共にするのではなく、顔を上げて世界を見ていれば、自然に人間の感情はそうなれるものです。その人間の本質をもう少しだけ育てることが、『寄りそう知性』を掲げる本学の教育ということになるのかもしれません」
