任意提出ではなく、出願要件や点数化される場合は提出が必須

 大学によっては、提出や申請は任意としているところもあります。佐賀大学や大分大学の「特色加点」などは申請しなかった場合は0点として扱われますが、学科試験の得点が合格ラインを超えていれば合格となります。この場合は試験で得点する自信があれば、未申請でも合格は可能です。ただ、点数化されるものを申請しないというのは、入試対策のセオリーからは外れていますので、よく練られていない文章でも良いので何らかのものを提出・申請することが良いでしょう。

 大学によっては、全出願者の志望理由書等を点数化して合否判定に使用するところもあります。この場合の配点も各大学で様々ですが、2次試験総点の2割近くになる大学もありますので、そのような場合にはさすがに見過ごせません。そのため、点数化される場合は、多くの受験生は限られた時間の中でそれなりの作文をして提出すると思います。

 ここで問題となるのは、点数化はされないものの提出を必須としている場合です。横浜国立大学の場合、「自己推薦書」の提出が求められています。点数化はされませんが出願書類の一部ですので、未提出だと出願書類の不備となります。つまり出願要件を満たしていないことになります。この場合、受験生にとって最悪のケースは、書類不備のため合否判定の対象外とされることです。今年の受験生は本当に多くの苦労を乗り越えてここまで来ています。書類の不備のような実力外でのケアレスミスは是非とも避けたいところです。

大多数の高校生は特別な活動を経験していないため、評価ではほとんど差がつかない

 主体性等の評価の配点比率は、多くの場合、合否に決定的な影響を与える程ではありませんので、受験生はここでの評価が低くなっても構わないと割り切って、簡素な文章でも良いので必ず提出しておくことが大切です。そもそもこうした書類で決定的な差がつくことはほとんどありません。多くの大学は複数の審査担当者がルーブリックを用いて点数を決めていると考えられますが、白紙提出や指定文字数以下などを除くと極点に悪い点数はなかなか付けられないものです。それは活動内容にそれほど差が出ないことも理由のひとつです。

 全国的に見れば、SSHやSGHの高校などで特別な活動を行った経験を持つ高校生の方が少なく、大多数の高校生は校内での学校活動が高校生活の中心です。文化祭や体育祭など学校行事も学校間で大きな違いはないため、そこでの活動で差が生じることの方がむしろ少ないと言えます。また、志望理由も「地元の大学だから」、「先輩が多く進学しているから親近感がある」でも十分な理由です。

 入学後の学修内容や研究内容を深く調べていることに越したことはありませんが、こうした書類の作成に時間を取られるよりも、合否に決定的に影響する学科試験対策のために時間を使いたいところです。主体性等の評価のための書類には過度な完成度を求めないで、時間がない場合には、形式的に整っていれば良いと割り切ることが大切です。大学も本音としては、主体性<学力です。
 

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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