AI技術の急速な発展により、教育の在り方が再考されています。AIは膨大な情報を処理し、瞬時に答えを提示する能力を持っていますが、問いを立て、情報の意味を理解し、判断を下すのは、依然として人間の役割です。したがって、これからの教育においては、知識の記憶ではなく、思考力の育成がより重要になると考えられます。
初等・中等教育は、すべての学びの土台を築く段階です。読み・書き・計算といった基礎的な能力の育成は、時代が変わっても変わらず重視されてきました。社会や技術がどれほど進化しても、人間が社会の中で生き、学び、働くうえで、言語と数理の力が不可欠であるという点において、その意義は揺らいでいません。むしろ、AI時代を迎えた今だからこそ、こうした基礎の重要性が再確認されています。
AIの進化に対して不安を抱く声もありますが、AIを恐れる必要はありません。AIはあくまで人間が設計し、制御するものであり、所詮は道具にすぎません。道具である以上、それをどう使うかが本質であり、使い手の能力が問われます。AIに使われるのではなく、AIを使いこなす力を育てることが、これからの教育の大きな課題です。
このような力を育てるためには、言語と数理の基礎を丁寧に積み上げることが不可欠です。物理や数学は、論理的に考える力や抽象的に捉える力を養う学問であり、単なる知識の習得にとどまらず、思考の訓練としての価値を持っています。自然現象や数量関係を理解する過程で、筋道を立てて考える力が育まれます。また、数式は自然や論理を表現するための記号体系であり、言語の一種とみなすことができます。科学や技術の分野では、数式を用いて現象を記述し、他者と知見を共有します。言語が人と人をつなぐ手段であるように、数式もまた、科学的理解を共有するための重要な媒体です。
さらに、自然言語、特に母語である日本語の運用能力も欠かせません。科学的な思考や発見を社会と共有するには、論理的かつ明確な表現が求められます。読解力、表現力、語彙力といった言語能力は、すべての学びの基盤であり、思考の深さや広がりを支える柱となります。AIは非常に強力な道具ですが、それに依存するのではなく、主体的に活用するための力が求められます。情報を受け取るだけでなく、それをどう扱い、どのように意味づけるかという能力が、今後ますます重要になるでしょう。教育においては、言語と数理の両面から思考力を育てることが、AI時代における人間の知的自立を支える鍵となります。
また、AIを使うためにAIの勉強をするのは得策ではありません。AIはあくまで道具であり、その使い方を学ぶことは重要ですが、AIそのものを深く理解することは必ずしも必要ではありません。自動車を運転するためにエンジンの仕組みを知る必要がないのと同じように、AIを効果的に活用するためには、基礎的な思考力や問題解決能力を養うことが重要です。AIを使いこなすためには、まずは自分自身の知識やスキルを高めることが求められます。
結局のところ、近代的な教育が重視してきた基礎の力――言語力と数理的思考力を育てるという方向性は、決して間違っていなかったのです。むしろ、それは今後の社会において、より確かな価値を持つものとして再評価されるべきでしょう。
※本稿は、「FUMICS BIG EGG」no.787(高等教育問題研究会一まずはじめよう会)に、5月24日の同名の例会の解題として寄稿されたものに加筆修正を加えたもの。原文には「せっかくなので生成AIに作ってもらいました。いつも私が書く文体とは違いますが伝えたいことは入っています。あえて何も直していませんので楽しんで読んでください。使ったプロンプトは28個です」とある。
JAXA宇宙科学研究所研究開発員
長谷川 克也さん(医学・工学・農学博士)