第15回「科学の甲子園」全国大会(科学技術振興機構主催、茨城県など共催)が、3月20〜23日の4日間、つくば市のつくば国際会議場およびつくばカピオで開催されました。本大会の各都道府県における代表選考には、697校から7,892人がエントリー。予選を勝ち抜いた全国47都道府県代表校は、1・2年生の6〜8人から成るチームで、科学に関する知識とその活用能力を駆使してさまざまな課題に挑戦し、総合点を競い合いました。

 筆記競技と3種目の実技競技(※参照)の得点を合計した総合成績により、岡山県代表・岡山県立岡山朝日高等学校が優勝、奈良県代表・東大寺学園高等学校が第2位、大分県代表・大分県立大分上野丘高等学校が第3位となりました。

 激戦を制した岡山朝日高校の優勝は県立高校としては5年ぶり、中学の併設されていない高校として9年ぶりとなりました。

第15回「科学の甲子園」全国大会 成績表
 近年の傾向として、公立も含め中高一貫や中学校を併設する学校の活躍や、女子生徒の割合が増える中、併設中学のない公立高校で、しかも男子だけのチームの優勝となりました。また、科学の甲子園ジュニアの前年優勝チームが実技競技3にゲスト参加し、第13回大会優勝の千葉県代表チームが上位に食い込み話題となりました。

 「第16回科学の甲子園全国大会」は、2027年3月下旬に、茨城県つくば市で開催される予定です。
第15回「科学の甲子園」全国大会出場校

 大会初日は開会式とオリエンテーション、科学に関する知識とその応用力を競う筆記競技が行われ、2日目には実技競技、3日目には表彰式やフェアウェルパーティーなどが行われました。

【筆記】 身近な現象を発展させた問題構成が特徴的な筆記競技

 教科・科目の枠を超えた融合的な問題にチームで挑む筆記競技は、各チーム6人を選出して行われました。競技時間は120分。メンバーそれぞれの得意分野を活かしながら協力し、理科・数学・情報の知識をもとに、その応用力や思考力が問われる問題に取り組みました。

 今年の問題は、身近な現象を出発点としながらも、物理法則や数理モデルへと発展させる構成が特徴的でした。例えば第1問は、ペットボトルを用いた打楽器を題材に、「内部の空気圧の変化によってなぜ音の高さが変わるのか」という問いから出発します。気体の状態変化(理想気体の性質)に加え、弦の振動、さらには曲面の張力と圧力の関係といった内容を段階的に扱い、最終的には振動数と圧力差の関係を導くという展開です。

 第2問では、理想気体とゴム紐という一見異なる対象を「熱機関」という共通の枠組みで捉え、熱力学第一法則に基づくエネルギー変換や効率を比較する問題が出題されました。さらに第3問では、「質量」という基本概念を軸に、原子量の歴史や単位の定義、測定原理にまで踏み込むなど、科学の基礎が多角的に問われました。

 このように、今年の筆記競技は、単なる知識の再生ではなく、「異なる分野をつなぐ視点」と「現象をモデル化する力」が求められる問題構成となっており、チーム内での役割分担や議論の質が得点に大きく影響する内容でした。第1位のスカパーJSAT賞は東大寺学園高等学校(奈良県)で、第2位の内田洋行賞はラ・サール高等学校(鹿児島県)でした。

【実技①】見える波と見えない波 その違いを探る

科学の甲子園全国大会 実技1 解説(画像をクリック)

 

 「海の波の速度の不思議」(競技時間100分)は、大型水槽でつくる表面波と、真水と食塩水の境界に生じる内部波を観察・測定し、その違いを考察する実技競技です。

 課題1では表面波の速さを測定し、水粒子の動きや、波が進んでも水そのものが遠くまで運ばれるわけではないことを確かめました。課題2では小型水槽で内部波の速さを測り、食塩水の濃度を変えたときに波の伝わり方がどう変わるかを予想・検証しました。目に見える海面の波だけでなく、水の内部をゆっくり進む波まで扱うことで、地学と物理の両面から現象を捉える力が問われました。

 観察結果をもとに筋道立てて考え、チームで役割分担しながら解答を組み立てていく力も試される競技で、ラ・サール高等学校(鹿児島県)が1位となりトヨタ賞を、久留米大学附設高等学校(福岡県)が2位となりケニス賞を受賞しました。スリーエム ジャパン賞(熟考探究賞)は滋賀県立膳所高等学校(滋賀県)に贈られました。

【実技②】見えないイオンを手がかりに 化合物の正体に迫る

 「イオン交換エクスプレス」(競技時間100分)は、硫酸銅(II)水溶液の濃度を求めるとともに、①〜⑧の白色粉末に含まれる化合物を特定していく実技競技です。

 試料の候補は、Na+、K+、Cs+の3種類の陽イオンと、Cl-、Br-、I-、SO42-の4種類の陰イオンからなる12種類で、参加者は陽イオン交換樹脂を通して得た酸をNaOHで滴定しながら、観察結果をもとに未知試料の正体を絞り込みました。したがって、この競技で問われたのは単なる滴定の正確さではなく、使う器具や白色粉末の量をどう選ぶか、限られた時間の中で実験計画をどう組み立てるかという総合的な判断力です。見えないイオンのふるまいを、操作・観察・考察を通して確かな答えへ結びつけられるかが勝敗を分けました。

 その結果、石川県立金沢泉丘高等学校(石川県)が1位となり、UBE三菱セメント賞を受賞しました。2位は愛光高等学校(愛媛県)で、テクノプロ賞を受賞しました。ジー・サーチ賞(実験スキル賞)は鳥取県立鳥取西高等学校(鳥取県)が受賞しました。

【実技③】電磁誘導を生かして 挑むリング射出競技

 事前公開競技「目指せ!電磁力でカップイン」(競技者4人・競技時間160分)は、トムソンリング装置を用い、アルミ製のジャンプリングを得点エリアへ射出する実技競技です。

 会場ではコイル、鉄心、発射台を製作し、事前製作のTR電気回路、ジャンプリングと組み合わせて競技に臨みました。予選チャレンジでは60秒の間にリングを発射し、カップ100点、グリーン50点、ラフ20点として得点を競いました。したがって、この競技で問われたのは単なる飛距離ではなく、コイルや鉄心の工夫、リング形状、射出角度、充電電圧、発射回数のバランスをどう最適化するかという総合的な設計力です。電磁誘導という教科書の原理を、工作・調整・作戦へと結びつけられるかが勝敗を分けました。

 その結果、岡山県立岡山朝日高等学校(岡山県)が1位となり、学研賞に輝きました。2位のナリカ賞は茨城県立土浦第一高等学校(茨城県)、東京エレクトロン賞(工作デザイン賞)は徳島県立城ノ内中等教育学校(徳島県)が受賞しました。

岡山県立岡山朝日高等学校 優勝の喜び~勝因は緊密な連携と協力~

 表彰式では、「日頃の努力の結果が出てすごく嬉しい」。勝因については、「実技3で1位だったこと。それとみんなで協力して互いに弱点を補いあえたことが大きかった」と答えたメンバーたち。キャプテン三浦さんは優勝チーム記者会見で再び今の感想を問われると、「正直、まだ現実を受け入れることができず、少し困惑しています」と、まだまだ興奮冷めやらぬ様子。同じく高山さんも「夢ではないか」と。

 化学部を中心にした岡山朝日高校チームにあって、部外から参加の山本さんは、「仲良しの化学部の友達から誘われて出場することになったが、今回のような本格的な実験の経験はなく手探りの連続だった。ただ化学に強いチームの子たちに教えてもらい、計量などのサポートに徹し、その場その場でうまく判断できたと思っている」と。そして「誰が一番頑張ったというよりは、みんなでできないところを補い合って、連携を密にしたことが一番の勝因だと思っている。本当に嬉しいし、仲間にはありがとう以外に言葉はない」と、八木さんとともに連携、協力の大切さを語ってくれた。

 高橋さんは、連携の重要性にもふれる一方「他校の人が結構話しかけてくれ、個性豊かな人たちと交流できたのが嬉しかった」と、大会の意義を強調してくれた。これからを見据えた意見も聞かれた。森平さんはサイエンスオリンピアードに向けて、「今回の実技競技に出て悔やまれたことを修正できる最後の機会になると思う。頑張ってこようと思います」と意気込みを聞かせてくれた。またサッカー部に所属していて、大会直前に怪我をして、それを押して出場した2名の1年生の内の一人、佐野さんは、「怪我していても大丈夫と先輩たちが見守ってくれたことが嬉しかった。しかもそんな中で優勝できたから本当にうれしい」と。もう一人の一年生青木さんも、「筆記競技の地学で知らないところが出たが、先輩が教えてくれていい結果が得られた」と、チームの力がいかに大切かを強調してくれた。

 最後に引率の関和久先生は「私も生徒たちと同じで、実技競技3で1位になれたことが嬉しく、そして最後まで頑張った結果が優勝につながったのではないかと思っています。同時に、優勝できたことがまだ夢ではないかとも思っています。ここから先も、今回の力を生かして頑張ってもらいたい」と結ばれた。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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