北海道大学大学院の日置幸介教授とシャフル・アリーフ氏(現インドネシア国土地理院)らの研究グループは、日本列島に多数展開された全球航法衛星システム(GNSS/GPS)のデータを解析し、毎年夏季に西日本を襲う豪雨により、地表が最大1~2cm沈降したことを確認した。

 沈降は雨水荷重による地球の弾性変形によるものと考えられ、平成30年7月豪雨や令和2年7月豪雨で特に顕著だった。積雪荷重による日本列島の冬期の地殻変動は、20年前の測位衛星を用いた精密位置計測で分かっていたが、雨による地殻変動は短期間しか継続しないため解析が難しく、これまで検出が困難だった。

 今回研究グループは、国土地理院が運用するGNSS観測網を利用。洪水前後を含めた期間のGNSS観測局の上下位置の時系列から見かけの変動を注意深く取り除くと、洪水の荷重に伴う1~2 cmの沈降が浮かび上がる。本研究ではGNSS観測局の沈降を、気象庁が運用するアメダス雨量計等のデータと比較し、それらの比例関係を見出した。

 雨量と沈降量は西日本全体など広域の合計として求めると、1日に100mmの雨が降ると地面が1cm弱だけ沈むという比例関係にあった。また日本の河川は短くて勾配が大きく、雨水が海へ流れる速度が速いため、これらの沈降は豪雨が終わると約1日で回復して元に戻ることも分かった。

 これまで、GNSS局の上下位置にしばしば見られる異常な沈降の原因は謎だったが、今回の結果によって沈降のかなりの部分が雨水の荷重によるものであり、固体地球の実際の変形に起因することが判明した。今後、GNSS局の詳細な位置変化の理解が進むことが期待される。

論文情報:【Earth and Planetary Science Letters】Crustal response to heavy rains in Southwest Japan 2017-2020

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