芝浦工業大学システム理工学部の越阪部奈緒美教授らの研究グループは、最新のAI構造予測モデルを用いてヒトの苦味受容体25種類の三次元構造を予測し、その精度を実証した。
ヒトが苦味を感じるためのセンサーである苦味受容体(T2R)は、口腔内だけでなく腸などの体内にも存在し、25種類あることが知られている。しかし、このうち実験的に構造が明らかになっているのはT2R14とT2R46の2種類のみにとどまる。
研究グループは今回、Googleが2024年5月に発表した最新のタンパク質構造予測AI「AlphaFold3(AF3)」を用いて、25種類のT2Rの構造を網羅的に予測した。そのうちT2R14とT2R46について既知の実験構造と比較した結果、従来の予測モデル「AlphaFold2(AF2)」よりも高い一致度を示すことを確認した。これにより、AF3がより高精度な構造予測を可能にすることが実証された。
さらにAF3による構造予測の結果、細胞内領域や膜貫通領域は構造が安定している一方で、細胞外領域は構造の多様性が高いことが明らかになった。また、構造の類似性に基づいてT2Rを分類したところ、3つのクラスターに分けられることが判明し、特定の受容体群が共通の機能を有する可能性も示唆された。
先行研究では、苦味受容体が血糖値や満腹感を調整し、腸脳軸・食欲調節・糖代謝などに関与する可能性が報告されている。今回の成果により、苦味受容体の正確な構造解明が進むことで、糖尿病や肥満といった生活習慣病の予防や治療法の開発につながることが期待される。今後は、食品・医薬品分野への応用が見込まれるとしている。
