兵庫県立大学先端医療工学研究所と兵庫県立はりま姫路総合医療センターの共同研究グループは、治療可能な疾患である正常圧水頭症(iNPH)を、脳MRI画像から高い精度で識別する画像診断AIを開発した。
iNPHは高齢者に多くみられ、脳脊髄液がたまることで歩行のふらつきや認知機能の低下などを引き起こす病気である。手術で症状の改善が期待できる一方、アルツハイマー型認知症や神経難病である進行性核上性麻痺(PSP)と症状が似ているため、診断に至らず本来の治療機会を逃してしまうケースが問題視されてきた。
研究グループはiNPHの脳MRI画像に特徴的な変化が見られることに着目し、AIを用いて疾患の鑑別精度を高める手法を検討した。MRI画像に含まれる脳全体の形の変化や疾患に関連する領域をAIに学習させることで、iNPHの特徴を自動的に識別する画像解析技術を開発した。
118名分のMRI画像を用いて性能を検証した結果、診断精度は98.3%に達し、非常に高い精度でiNPHを見分けられることが示された。さらに、AIが識別の際に注目した部位を確認したところ、医師が実際の診断で注目する部位と一致しており、AIによる識別が医学的にも妥当であることが確認された。
この研究成果は、治療効果が期待される患者の見逃しを減らすための診断支援技術として極めて有用である。MRI画像のみを用いるため、患者に新たな負担をかけることなく既存の医療体制に導入できる点も利点といえる。
今後は、多施設での検証や医療現場での実証を進め、診断支援ソフトウェアとしての実用化を目指すとしている。本技術の普及により、これまで診断が難しかった患者にも適切な治療の機会を提供できるようになることが期待される。
