岡山大学と龍谷大学先端理工学部 森正和准教授らの共同研究チームは、短炭素繊維を窒素ガスとともに吹き付けることで、エアロゾル化した短繊維素材が絡み合い、立体構造物を高速に成形できる新たな手法「繊維エアロゾル堆積法(Fiber Aerosol Deposition:FAD)」を開発した。

 リサイクル過程で大量に発生する短炭素繊維は、長さ1mm未満の炭素繊維であり、優れた機械的特性や導電性、化学的安定性を有することから、安価なリサイクル材料として注目されている。しかし、従来の成形技術では短繊維への適用が難しいことや、接着剤(バインダー)が必要であることなどの課題があった。

 研究チームは、偶然発見した現象を手がかりに、短炭素繊維を窒素ガスと混合してエアロゾル化し、基板に噴射するという新たな成形手法を考案した。この方法により、バインダーを一切使用することなく、短繊維素材を高速かつ立体的に堆積させ、構造物を構築することができる。

 走査型電子顕微鏡およびX線CTによる詳細な観察の結果、成形過程では、比較的長い繊維(100μm以上)が基板表面に定着して骨格となるフレーム構造を形成し、その隙間に短い繊維が高密度に充填されていることが明らかになった。これにより、繊維同士の強固な摩擦力による絡み合いが生じ、バインダーなしでも高い機械強度が実現される。さらに、本手法では最大0.3mm/sの垂直成長速度を達成しており、一般的な3Dプリンティング技術を大きく上回る成形速度を示した。

 繊維同士の「摩擦による絡み合い」を利用した材料形成メカニズムの発見は世界初であり、本技術は長軸構造を持つ短繊維素材であれば広く適用可能だとしている。例えばナノサイズの金属繊維や植物由来繊維、プラスチック繊維、さらにはDNAなど、さまざまな繊維状物質への応用が期待される。

 本研究成果は、短繊維素材の有効活用や新たな機能性素材の創出につながるとともに、資源の循環利用を通じた循環型社会の形成にも寄与するものと考えられる。今後は、さらなる構造制御の高度化と、実用化を見据えた実証研究を進めていく。本研究成果は、オランダの学術誌『Materials & Design』に掲載された。

論文情報:【Materials & Design】An entangled material made from fiber aerosol
deposition method

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