千葉大学大学院医学研究院の馬場隆之教授、川上英良教授らの研究グループは、進行によりやがて失明に至る指定難病「網膜色素変性症(Retinitis Pigmentosa、以下RP)」の診断と予後予測を行うAIを開発した。
RPは、網膜の視細胞が徐々に障害されることで視機能が低下し、最終的に失明に至る遺伝性疾患である。国内患者数は推定3万人以上とされるが、進行速度には大きな個人差があることが知られている。
本研究では、RP患者と非RP患者の眼底写真を用いた既存の深層学習モデル4種を基に、RPの診断モデルを構築した。最も優れた性能を示した「EfficientNetB4」モデルでは、眼底画像のみからRPを高精度に診断できることが示された。
次に、このモデルを用いて千葉大学医学部附属病院の患者の眼底画像および視力予後のデータを学習させ、RP患者の視力予後予測モデルを構築した。このモデルは、眼底写真撮影後500~1,400日間に生じる将来の視力低下を、安定して高い精度で予測できることが明らかになった。
さらに本研究では、AIが画像のどの部分に注目して診断や予測を行ったのかをヒートマップにより可視化した。その結果、診断モデルと予後予測モデルでは重視される領域が異なることも明らかとなった。AIの判断の根拠が示されたことで、モデルの信頼性向上に加え、RPによる視力低下の病態メカニズムの解明にもつながると考えられる。
これまで、熟練した眼科医でも、眼底画像のみからRP診断の根拠となる微細な変化を検知することは困難だったという。本研究グループが開発したAIモデルは、医師によるRP診断を強力にサポートするツールになりうる。また、初の試みとなるRP患者の視力予後予測モデルは、早期に視力喪失が予想される患者への迅速な治療介入につながるなど、予後に合わせたRP診療の意思決定支援に寄与すると期待される。
