東北大学の研究グループは、皮膚の免疫系が過去の肥満状態を「記憶」しており、減量によって肥満が解消された後も、その影響が残り続けることを明らかにした。
肥満は全身に慢性的な炎症を引き起こし、乾癬やアトピー性皮膚炎などの炎症性皮膚疾患を増悪させる原因となる。これまで、減量(ダイエット)はこうしたリスクを軽減すると考えられてきた。一方で、脂肪組織では、減量後も免疫細胞に「肥満記憶」が残り、炎症リスクが持続する現象が報告されている。しかし、最大の免疫臓器である皮膚でも同様の「肥満記憶」が刻まれるのかは明らかになっていなかった。
そこで本研究グループは、肥満後に減量させたマウスモデルを用いて、皮膚免疫細胞の変化を検証した。
その結果、減量によって体重や血糖値、コレステロール値は正常に戻ったものの、「炎症のスイッチ」となる遺伝子(IL-17A、RORγt)の発現や真皮γδT細胞は、肥満時と同様に増加した状態が維持されていることが確認された。すなわち、「肥満記憶」は一度刻まれると減量後も皮膚に残存し、炎症を起こしやすい状態が維持されることが明らかとなった。
また、減量後のマウスに乾癬を誘発すると、肥満時と同等、あるいはそれ以上に重症化することも確認された。これらの結果から、肥満によって変化した皮膚は、減量後に一見正常に見えても「肥満記憶」を保持しており、ひとたび刺激が加わると急激に状態が悪化する可能性が示された。
本研究成果は、肥満によって変化した皮膚が痩せた後も元の状態には戻らない可能性を示唆し、肥満経験者における皮膚疾患リスクの理解に新たな視点を与えた。今後は、皮膚組織に刻まれた「肥満記憶」を司る分子メカニズムの解明や、過去の肥満歴を考慮した新たな治療・予防法、スキンケア支援の開発につながることが期待される。
