東京大学の研究グループは、福島第一原子力発電所事故後の帰還困難区域内に自生するキウイフルーツを調査し、放射性セシウム(134Cs・137Cs)の長期的な挙動を明らかにした。
2011年の福島第一原発事故以降、帰還困難区域内では営農が制限されてきたため、区域内の農作物に関する長期データは極めて限られている。そこで本研究では、原発の北西約12kmに位置し、事故後に除染が行われていない福島県浪江町小丸地区で自生するキウイフルーツの樹に着目した。同一の樹から5年間(2021~2025年)にわたり果実を連続採取することで、放射性セシウム濃度の長期的な変化を測定した。
計533個の果実を分析した結果、134Csは検出限界以下だった一方、137Csは全測定年の全ての果実で検出された。137Csの実効半減期(放射性核種の量が見かけ上半分になるまでの時間)は7.9年と推定され、帰還困難区域外の果樹で報告されている値(数か月~1年程度)よりはるかに長いことが明らかになった。
研究グループは、この要因として、①汚染した土壌から根を通じた放射性セシウムの吸収が継続していること、②採取地点が谷底に位置し、周囲の斜面から放射性セシウムが雨や風によって運ばれ、堆積しやすい環境にあることを挙げている。
本研究により、小丸地区のキウイ果実では、137Csの実効半減期が帰還困難区域外より著しく長いことが明らかになった。この結果から、地形や降雨・風による放射性セシウムの二次的な移動、除染の有無といった立地条件が、放射性セシウムの長期動態に大きく影響することが示唆された。今後、避難指示の解除条件や営農再開の可否を科学的に検討するうえで重要な知見となると期待される。
