Zoology: The stability and instability of bird flight
鳥類の飛行は本質的に安定な時と不安定な時があることを明らかにした論文が、今週Nature に掲載される。この研究知見は、鳥類の進化によって飛行安定性が低下し、操縦性が向上しているという一般的な仮説と矛盾している。今回の研究は、鳥類の飛行の進化を解明するための手掛かりをもたらし、鳥類の操縦性の理論モデルの基礎を築いている。
鳥類は、翼の形状を変化させて、驚くべき空中操縦を行うことができるが、こうした動きの急激な変化のダイナミクスは十分に解明されていない。この点をさらに解明するため、Christina Harveyたちは、鳥類種(22種)が翼の形状を滑らかに変化させる能力(モーフィング)に関する研究を行った。鳥類は、翼のモーフィングによってロール慣性とヨー慣性(前後軸と上下軸の周りの回転)を変化させることができるが、これらの変化は重心の位置にほとんど影響しないことが判明した。また、17種の鳥類種は、安定した飛行と不安定な飛行を切り替えることができた。
現生鳥類は安定した飛行を行う能力を有している可能性が以前の研究で示唆されているが、鳥類は、進化の結果、ピッチ(左右軸の周りの回転)が不安定になり、操縦性が向上したと広く考えられている。今回の研究は、安定した飛行のための翼の形状と不安定な飛行のための翼の形状を切り替える能力が、進化圧によって維持されている可能性があるという新たな説明を示唆している。また、今回の研究は、鳥類の飛行操縦性の数理モデルを考案しようとしている人々に対し、これまで欠落していた知識をもたらした。現在、同様の学説が、航空機について存在しているが、今回の研究で慣性特性が詳しく解明されるまでは、鳥類に適用できなかった。
[英語の原文»]
「Nature 関連誌注目のハイライト」は、ネイチャー広報部門が報道関係者向けに作成したリリースを翻訳したものです。より正確かつ詳細な情報が必要な場合には、必ず原著論文をご覧ください。
※この記事は「Nature Japan 注目のハイライト」から転載しています。
転載元:「 動物学:鳥類が安定した飛行をする時と不安定な飛行をする時」