岐阜大学の久保和弘教授と株式会社TKSは、硬水を噴霧化することで容易に適度な硬度に軟化できることを明らかにした。
硬水は、炭酸カルシウム(CaCO3)の濃度が120mg/L以上の水と定義される。その特徴ゆえ、日常生活における硬水使用は、カルシウム過剰摂取による前立腺癌のリスク増加や、配管内での沈殿物(CaCO3)析出量増加などさまざまな問題を引き起こす。ヨーロッパ、北アメリカ、アジアなどの硬水地域では、しばしば水の軟化処理が行われているが、既存の軟化技術は専用の装置を必要とし、排水も問題となるなど、簡易とはいえない。よりシンプルな軟化技術が望まれてきた。
本研究では、硬水を噴霧化処理し、気液界面積を極大化することで、硬水中の過飽和二酸化炭素(CO2)を揮発させればCaCO3の沈殿を促進できるのではないか、すなわち水の軟化が実現できるという仮説を立てて実験を行った。その結果、硬水を大気に噴霧すると、水の中に白い沈殿物と微細な泡が生成され、カルシウムイオン(Ca2+)濃度と電気伝導度が減少することを見出した。これは、硬水が霧化され、かつ、多量のファインバブル(小さな気泡)が発生したことによる気液界面積の拡大に起因して、水中に溶解していたCO2が気相に移行し、CaCO3が析出したと考えられるとしている。また、噴霧化処理後、収集された水を静置させておくと、時間の経過とともに白色沈殿物がさらに増加し、Ca2+濃度が減少した。硬水の硬度が高いほど、そして、噴霧化処理時間が長いほど、これらの現象は顕著であったといい、最終的に、本技術で得られた水のCa2+濃度は、EU加盟国が定める軟化水ガイドラインの推奨範囲内にほぼ収まった。
本研究で開発した軟化技術は、硬水を容易に適切な硬度に軟化できることから高い汎用性が期待され、世界にも大きな需要が考えられるという。今後は、本技術を応用した製品開発も進めるとしている。
論文情報:【Food Science and Technology Research】Hard water can be softened by atomization