畿央大学大学院博士後期課程/摂南総合病院の赤口諒氏、同大学の森岡周教授、国立障害者リハビリテーションセンター研究所・神経筋機能研究室の河島則天室長(畿央大学客員教授)を含む研究グループは、脳卒中患者の物体把持動作について、感覚フィードバックの影響を大きく受けることを明らかにした。

 脳卒中患者において、麻痺した手指機能の改善はリハビリテーションの主要な目標となるが、軽度の運動麻痺にも関わらず、感覚障害が原因で動作拙劣を呈する患者が少なくない。

 そこで本研究では、手指による物体把持動作に、感覚フィードバックがどのように影響するかを探るため、まず脳卒中患者の物体把持動作中の特徴を捉えるべく①物体重量に応じた力調節、②動作安定性、③予測制御を評価した。その結果、脳卒中患者は物体を把持する際に、健側と比べ患側では①有意に過剰な把持力を発揮し、②物体把持安定性が乏しく、③予測制御が停滞していることを発見した。

 また、これらの特徴は運動麻痺よりも感覚障害との関連性が高く、感覚障害が重度であるほど把持力の過剰出力が生じ、物体の把持安定性が失われ、予測制御が損なわれる傾向が示唆されたという。

 感覚情報は、運動動作逐次のフィードバック制御だけでなく、運動の結果として得られた誤差情報を次の動作に活かす「内部モデルの更新」にも不可欠である。そのため長期にわたる感覚障害が内部モデルの更新を妨げ、予測的な把持力制御を困難にしていることが、これら症例の動作の過剰出力や不器用さにつながっている可能性が考えられるとしている。

 本研究グループは、感覚障害由来の動作拙劣さを呈する脳卒中患者の手指機能改善につながるリハビリテーションを検討しており、把持力計測を用いてその効果を検証するための研究も進めるという。

論文情報:【Clinical neurophysiology】Relative contribution of sensory and motor deficits on grip force control in patients with chronic stroke

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