東北大学とエコチル調査宮城ユニットセンターのグループは、母親の妊娠期から出産後までの身体活動レベルが子どもの身体活動レベルに影響を及ぼすことを明らかにした。

 子どもが生活習慣を形成していく際、親の生活習慣の影響を受けると考えられる。「子どもは親の背中を見て育つ」というように、母親に活動的な生活習慣がある場合、子どもの運動量も多いのだろうか。

 本研究グループは、環境省による子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の一環として、1,067組の母子を対象に研究を実施した。妊娠確認時から産後5.5年まで追跡したデータを用いて、「妊娠前」、「妊娠中」、「産後1.5年」、「産後3.5年」、「産後5.5年」の5つの時点で母親の身体活動レベルを質問票により測定し、5.5歳時点の子どもが1日60分の身体活動を週5日以上実施する確率との関連を検討した。

 その結果、妊娠前から産後5.5年の各5時点の身体活動レベルの合計得点が最も高い母親のグループの子どもは、最も低い母親のグループと比較して、1日60分の身体活動を週5日以上実施する確率が3.72倍高いことが示された。この結果から、妊娠前から育児期を通して母親の身体活動レベルが高いほど、5.5歳時点の子どもの身体活動レベルも高い傾向があるといえる。なお、時点ごとの検討では、妊娠中および産後5.5年における母親の身体活動レベルが子どもの身体活動レベルと関連することを確認した。

 以上から、小児肥満や体力不足の一因ともなる子どもの身体活動不足を解消するには、母親の妊娠期~育児期における身体活動を高く保つことが重要である可能性が示唆された。子どもの身体活動促進を目指して、学校内だけではなく、家庭内での身体活動向上の取り組みの重要性を示す成果である。

論文情報:【Journal of Epidemiology】Association between maternal physical activity from pre-pregnancyto child-rearing and their children’s physical activity in early childhood amongJapanese

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