東邦大学薬学部薬理学教室の小原圭将准教授、吉岡健人講師、田中芳夫教授らの研究グループは、青魚に含まれる「ドコサヘキサエン酸(DHA)」が精管平滑筋の収縮を抑制することを明らかにした。
DHAはサバやイワシなどの青魚に豊富に含まれる脂肪酸であり、心血管疾患リスクの低減、血圧や脂質の改善、脳機能の維持・認知機能低下の予防など、健康上の有益な作用が多数報告されている。さらに本研究グループはこれまでに、DHAが血管や消化管の平滑筋収縮を即時的に抑える効果を持つことも報告している。
一方で、精管(射精時に精子を送り出す器官)の過収縮は、射精管閉塞などに関与し、男性不妊の一因とされている。そこで本研究では、DHAの収縮抑制作用が精管に与える影響を検討し、男性不妊の改善につながる可能性を探った。
雄ラットの精管平滑筋にノルアドレナリン(NA)を投与して収縮を誘発し、DHAの効果を解析した結果、DHAは濃度依存的に精管平滑筋の収縮を抑制することがわかった。作用機序をさらに調べたところ、DHAは精管平滑筋のTRPC3/6チャネルを介したカルシウムイオン(Ca2+)流入を抑える可能性が示された。
NAはL型Ca2+チャネルとTRPC3/6チャネルの二つの経路を介してCa2+流入を促し、精管平滑筋の収縮を引き起こす。DHAはこのうちTRPC3/6チャネル経路を選択的に抑制することで、精管平滑筋の収縮を即時的に弱めることが明らかとなった。
本研究により、DHAの新たな生理作用が明らかとなったとともに、精管の過収縮に伴う症状軽減に寄与する可能性が示された。本研究で有効とされたDHA濃度は、食事やサプリメント摂取後に報告されるヒト血中DHA濃度の範囲とおおむね重なっており、臨床応用への期待が高まっている。