「推し活」という言葉が、当たり前のように使われる時代になった。アイドル、アニメキャラクター、スポーツ選手――誰かのオタクとして振る舞うことに、もはや恥ずかしさはない。むしろ「誰推し?」という一言が、友達作りのきっかけになるのが令和の風景だ。

 この現象を社会学の視点から研究しているのが、2026年4月に甲南女子大学に開設される社会学部の学部長に就任予定の池田教授である。専門は文化社会学、とりわけファン研究にある。

 既存の人間科学部文化社会学科と生活環境学科を統合し、さらにビジネス社会専攻を加えて新設される社会学部総合社会学科では、三つの専攻領域を横断しながら、「好き」を起点にさまざまな分野を多角的に学んでいく。今回は、新学部開設にあたり、池田教授に話を聞いた。

 

経済を回すのは、「オタク」と「推し活」

 「推し」という言葉は、30年ほど前から女性アイドルグループのファンが使い始めたものだという。それが別グループのファンにも広がり、運営側が「推しメン」という言葉を積極的に使い始めた。グループが専用の劇場から地上波へ進出する人気の波に押されて、「推し」という概念が世間に広まったというのが池田教授の分析である。

 また、「推し活」という言葉自体が、「オタク」よりも中性的で使いやすいイメージを持っていることも重要だと池田教授は指摘する。企業やメディアが「推し活」という言葉を使いやすく、それがさらにイメージを良くするという相互作用が働いている。かつて隠すべき趣味だったオタク文化が、今や経済を動かす原動力として認識され、さまざまな企業がコラボレーションに乗り出している。

「推し」を通して社会や文化を知り、自分自身を知る

 池田教授が担当する「ポピュラーカルチャー論」の授業では、まずマーケティングの視点からファンを理解し、次に英語圏のファン研究の流れを学び、最後に現代的なトピックを取り上げる構成になっている。

 この授業で教授が最も望んでいるのは、学生たちが「自分自身を知る」ことだ。「推し活をしている自分と自分の間に一本線を引いて、客観的に見られるようになってほしい。第三者的に見るとファン行動ってこんな風に見えるんだ、と知ることで、場合によっては『ちょっとやりすぎたな』とブレーキをかけることもできる」と池田教授は述べる。ただ推し活を楽しむだけでなく、そこから他者(社会)を知り、さらには自己分析につなげることができれば、より有意義なものになるというのが、池田教授の考え方だ。

 過去の卒業論文には、野球を好きな女性ファンの研究、K-POPのホームページマスター(自身が撮影した写真を共有するアイドルファン)の評価について、新聞記事におけるオタクの語られ方の変遷、大阪・日本橋のオタク街の形成過程を住宅地図を使って追跡した研究など、多彩なテーマが並ぶ。学生たちは資料を集めたり、アンケート調査を行ったり、社会学のアプローチを学びながら、好きなことを起点に研究することができる。

「社会学と文学の違い」について、池田教授はこう説明する。「文学はテキストがある。小説という形で文字になっている。でも社会科学が扱う人間の行動は、文字になっていない。だからデータにしないといけない」。

 そのために必要なのが社会調査だ。インタビューの仕方、アンケート調査票の作り方、データの読み方――これらの技法を学ぶことで、目に見えない人間の行動を「読める」ようにする。社会調査士という資格も取得でき、調査の立案から計画、実行、まとめまで一連のプロセスを体系的に学ぶことができる。

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甲南女子大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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