千葉大学と広島大学大学院の共同研究グループは、うつ病患者を対象として、個人の独自性を示す脳の領域間の機能的なつながりのパターンである「機能的コネクトーム(FC)独自性」を解析した結果、健常者と比較して有意に低下していることを明らかにした。
近年、脳の領域間のつながりのパターンが指紋のように個人ごとにユニークで安定しているという「脳の指紋」という概念が注目されている。この独自性は脳の成熟や精神的健康状態を反映するとされる。
研究グループはこの指標により、その臨床的な妥当性の検証を世界で初めて実施。今回、19歳から37歳のうつ病患者35名と健常対照群(HC)42名に対し、多施設で撮像した安静時機能的MRIデータを解析した。
その結果、うつ病患者は、健常群と比較して全脳レベルでの脳活動の独自性(FC独自性)が有意に低かった。特に、高度な認知制御を司る前頭頭頂ネットワークや、身体感覚を処理する感覚運動ネットワークにおいて、FC独自性の精度(脳の指紋を使用したときの本人の判別精度:脳指紋の精度)の低下が顕著だった。また、FC独自性が低いほどうつ病の重症度スコアが高い(症状が重い)ことが確認された。
脳は発達過程において「シナプスの剪定(せんてい)」や調整(チューニング)を経て、効率的で専門化された独自のネットワークを形成するが、うつ病患者では、こうした脳の微細な構造調整プロセスの不具合が、ネットワークの「自分らしさ」の確立を阻害している可能性があるという。
今回の研究は、診断の難しいうつ病に対して、客観的かつ再現性の高い神経画像マーカーを提供し、将来的な診断や個別化医療の進展に寄与できるとしている。
