科学警察研究所法科学第三部、横浜市立大学大学院の研究グループは、化学テロ発生現場に残留するVXやノビチョクなどの微量の神経剤を検知するための新たな手法を開発した。
近年海外で暗殺に使用された神経剤は長期間揮発せずに物体表面に留まるため、速やかに汚染部位を特定して除去(除染)する必要がある。しかし、特定には多大な時間と労力を必要とするため、神経剤汚染の簡便・迅速な検知手法が求められていた。
研究グループは今回、市販の化学分析装置(ナノ液体クロマトグラフ-質量分析計)に簡単な改造を施し、昆虫標本作製用の細い針の先端から安定したコロナ放電を生成できる装置を作製。有毒物質が漏洩しないようチャンバーと活性炭フィルターを取り付けた。
神経剤(VX、RVX、5種類のノビチョク)を、アラミド繊維片に載せた場合と、ドアノブや手すりを模したステンレス表面やプラスチック製スイッチプレートに付着させた後にスワブ(綿棒のようなもの)でふき取った場合とで測定を行い、検出性能を確認した。また、ふき取ったスワブを一定期間保存した後の検出の可否も確認した。
その結果、コロナ放電で生成するヒドロニウムイオン(H3O+)から神経剤に効果的にプロトン(H+)が移動することで、致死量の10万分の1~100万分の1が検知可能となり、テロ発生現場の汚染状況把握に十分な感度を示した。また、ふき取った後、数日後でも検出可能で、輸送などで時間を要しても適用可能と分かった。
今後は、マスタードガスや催涙剤など他の化学兵器用剤、覚醒剤・麻薬などの薬物、爆発物など、さまざまな物質の検知に適用することで、化学テロ対策や科学捜査への応用が期待されるとしている。
