東京大学大学院農学生命科学研究科の研究グループは、日本における「未利用魚」を「NUF(Neglected and Underutilized Fish)」として新たに定義し、その実態を明らかにするとともに、世界で初めて分類枠組みを提案した。

 近年、漁獲・水揚げされながらも廃棄されたり、十分に利用されなかったりする魚類の問題が指摘されている。日本では「未利用魚」や「低利用魚」と呼ばれ、その活用に注目が集まっているが、これらの現状や動向、定義に関する研究は十分ではなかった。

 そこで本研究では、かつて地域で食されながら現在は顧みられなくなった作物種を指す農業分野の概念「NUS(Neglected and Underutilized Species)」を応用し、新たに魚類を対象とした「NUF(Neglected and Underutilized Fish)」の概念を構築した。

 全国3か所の漁村を対象に調査した結果、NUFが発生する根本的な要因は、市場価値の低下や喪失にあることが明らかになった。買受人数の減少による不完全競争や、輸送コストが販売価格を上回ることといった構造的問題が背景にあるという。

 また、全国紙150年分、258件の新聞記事を分析したところ、「未利用魚」という用語は1977年以降に使われ始め、近年急増していることがわかった。人口減少による地域需要の縮小や、消費される魚種の均質化、市場の消費者主導化などが、NUFの増加につながっていることも明らかになった。

 さらに本研究では、「最終用途(人的消費か否か)」と「市場価値(価格がゼロか否か)」の2基準によるNUFの分類枠組みを世界で初めて提案した。この枠組みにより、魚を個体レベルで明確に分類することが可能となり、今後の国際比較研究の基盤となりうるとしている。

 本研究により、NUFの発生には、漁業・流通・消費側の要因が複合的に連鎖して影響していることが明らかになった。この成果は、水産物の持続的利用やフードシステムの強靭化、今後の漁業政策の立案に重要な示唆をもたらすことが期待される。

論文情報:【Fisheries Science】Neglected and Underutilized Fish (NUF): status, trends, and definition

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