尚美学園大学(埼玉県川越市)が、様々な業界人にインタビューした「プロが語る仕事論」の記事をお届けします。「芸術」「社会科学」「スポーツ」というユニークな分野の組み合わせを持ち、これまで多方面に人材を輩出してきた同大学から、各分野のプ口が仕事について語る記事が、学生に向けて発信されました。仕事の多様性と可能性の広がりを体現された方々の話には、未知の未来を持つ学生にとって将来のヒントとなるメッセージが込められていました。そのメッセージは学生に限らず様々な人に意義があると思います。そこで、全6回にわたり本記事を配信します。今回お話しを伺ったのは、国際共同製作による映画のプロデューサーとして活躍する佐藤菜穂美さんです。
【PROFILE】映画配給会社や動画配信プラットフォームで買付・企画、作品プロデュースなどに従事した後、独立。近年はVIPO Film Labやロッテルダム国際映画祭併設のワークショップ「ロッテルダム・ラボ」など、グローバルに活躍できるプロデューサーを養成するラボに参加し、国際的な企画開発や共同製作に関する知見を深めている。パーソナルで力強い物語を紡ぐつくり手たちと共に、国際共同製作を含むプロジェクトの開発に取り組み、2026年には携わった新作3作品の劇場公開が予定されている。
作品に対する情熱が認められて
プロデュース未経験ながらプロデューサーに。
両親が映画好きだったので幼い頃から映画を観て育ち、中学・高校の頃は毎日1本観るような生活でした。映画は生活の一部だったので、あえて映画業界を意識したことはなくて。就活をする時に、興味のあることは映画しか無いと思って映画配給会社に入社し、劇場宣伝や動画配信サービスへの営業、映画買付の仕事をしました。その後、Netflixから声をかけてもらって転職。当初は国内作品の買付や契約の業務をしていたのですが、オリジナル作品をつくる部門の責任者の方から「作品へのパッションがすごく強くて目利きの力もあるから、うちの部署に来ませんか」と誘っていただき、それまでは、作品のプロデュースの経験がないままではありましたが、Netflixでプロデューサーという立場になりました。様々な作品の企画やプロデュースをさせていただいた後、現在は独立して、映画のプロデューサーとして、世界中の観客に作品を届ける仕事をしています。
クリエイターのアウトプットに触れる
「最初の観客」になれるのが大きな魅力。
プロデューサーという仕事の魅力は、自分が信じるクリエイターが発するアウトプットの「最初の観客」になれることだと思います。そのためにも「このアイデアを、この人には話してみようかな」とクリエイターが思える信頼関係を築くことが大切だと思います。例えば、脚本が届いた時も1ページ1ページ大切に読みます。その時に感じたことが、最後まで映画製作のモチベーションとして、心のなかに残っていくので、緊張感を持って読んでいます。プロデューサーとしてのスタートがNetflixだったので、作品が外国語でSNSの話題になったり、映画祭に参加した時はヨーロッパやアジアのプロデューサーたちとの活発な交流もあります。そのような経験から「世界って近いんだ」と感じられたことが、現在の活動につながっています。今はどこの国でも海外作品が観やすくなったので、多様な国や地域の人たちに作品を観てもらえます。すごくワクワクしますね。

興味を持ったことを軸に知識を広げることが、
総合芸術である映画のクオリティにつながる。
様々なバックグラウンドを持つプロデューサーがいるので、プロデューサーになるためには何を学べば良いと一概には言えませんが、私自身はジャンルを限らず、興味があることを勉強し、追究したのが良かったと思っています。自分の強みの基盤にもなりましたし、学んできたことが創作や作品理解の助けになっています。自分が感動した映像やアートがあれば、まず調べてみる。自分が好きなものを解剖することで、自分の知識になります。そこから広がっていき、集合して塊になっていくので、自分は今もそういう学び方をしています。それが、総合芸術としての映画のクオリティにもつながると思います。またプロデューサーになって感じるのは、海外の文化の研究もしておいたほうが良いということです。多様な文化を知っておくことで、映画をつくる際の視野も広がるので、自分が学生に戻れるなら、文化をもっと勉強したいなって思いますね。
他の人がプロデューサーになった経緯を調べて、
「自分なりのルート」を見つけてほしい。
なりたい職業を目指すのであれば、自分にとっての目標やゴールを明確にすることが大切だと思います。映画製作も同様なのですが、ゴールを明確にし、逆算していくことで、道筋や必要なものが見えてきます。自分の目標やゴールは今でも、そのプロセスを経て整理しています。自分がプロデューサーになった経緯は一般的ではなかったので、「ルートはいろいろありますよ」ということは伝えたいです。戦略的にプロデューサーを目指した方も知り合いにいて、あえて海外に渡って自分自身のプロデューサーとしての強みを見つけたり。今は情報収集においても、海外へのアクセスもハードルが低くなりました。他の人はどうやってなったのかを知っておいて損はありません。その中から取捨選択して、自分なりの道をつくっていくのが良いと思います。高校生でなりたいと思ったのなら、進路をよく研究して、自分にとっての「最短ルート」を見つけてほしいですね。
【仕事の相棒/ネックレス】ドラマの美術監修をお願いした彫刻家の方から、ご自身の作品である、ミミズの糞塚を焼成して金を施したネックレスをいただきました。日常的にアートを身につけることで、自分を律する気持ちになれます。自然とのつながりも感じられるので、お守り的にいつも大切に身に着けています。
