2025年司法試験合格者の最年少は18歳だった。このうちの1人は早稲田大法学部1年生である。法務省が大学名を発表したわけではない。この合格者の出身校、早稲田大学本庄高等学院が次のように伝えてくれた。「18歳で司法試験合格」「高校3年次(2024年度)予備試験に合格し、本年度の司法試験にも一回目の受験で合格を果たしました。」

 また、合格者がこんな談話を紹介している。

「本庄高等学院2年次に法曹を志すと決め、その年の夏から本格的に受験勉強を始めました。目標が定まってからの2年間は、迷いなく司法試験の合格だけを見据えて机に向かい続ける日々でした。時には大変なこともありましたが、それでも『必ず合格したい』という思いが支えになっていたと思います」
(いずれも早稲田大学 本庄高等学院ウェブサイト 2025年11月5日 https://www.waseda.jp/school/honjo/news/8193

 司法試験合格者の低年齢化が見られる。これは早い時期に司法試験予備試験に合格することで、法科大学院に進まず司法試験本試験を受験できるシステムによるものだ。その詳細な中身、問題点については、「司法試験予備試験という劇薬、天才発掘とその功罪」で解説した。
(大学ジャーナルオンライン 2024年4月26日 https://univ-journal.jp/column/2024243900/

 今回の早稲田大附属校→早稲田大からの司法試験合格と似たケースは他大学でも見られた。2018年と2021年に慶應義塾大法学部1年生が司法試験に合格している。2人とも慶應義塾高校在学中に予備試験にクリアしての本試験合格だった。

 2021年合格者はこう綴っている。

「司法試験の勉強を始めたのは高校2年生の時で、高校3年生までの2年間が主な勉強期間になり、その間は高校生活と両立していました。高校との両立では、まず大前提として高校の勉強をメインとしていて、迷った際にはまずは高校を優先させました。高校では部活との両立は難しいと判断し、生徒会には入っていたものの、あまり活動せず、司法試験の勉強をしていました。司法試験の勉強は1コマ3時間の授業が週3回あり、授業と同じくらいの時間を復習するため、週18時間を目安に勉強していました」
(慶應義塾高等学校ウェブサイト 2021年11月13日 https://www.jukushin.com/archives/47939

 司法試験は7月中旬から始まる。大学入学後たった3カ月後なのに、なぜ合格するのか。端的に言えば、早慶の附属校にいるので大学入試のために受験勉強する必要がない。その分、司法試験対策の勉強がじっくりできるからだ。しかし「迷いなく」「週18時間」机に向かって合格したとはいえ、高校の授業で習ったわけではない。どうやって法律知識を身につけたのか。

 前記の早稲田大学本庄高等学院出身者や、慶應義塾高校出身の2人は完全な自学自修である。司法試験予備校のテキストやネット授業も使っただろうが、勉強の組み立ては自分で考えたはずだ。今年の司法試験合格者の平均年齢は26.8歳だった。平均年齢は最近10年で26.6歳~28.9歳となっている。彼らのような18歳での合格者は、毎日とんでもない集中力で法律知識を身につけた秀才であり、短時間でやり遂げたという意味では天才である。

 附属校から司法試験予備試験に合格、大学入学後に司法試験に合格。これは大学入試の勉強をする必要がないから可能だったといえる。結果的に高校と大学が密接なつながりを持っている、いわば「高大接続」の成果だ。これをロールモデルにした大学附属校の後輩はこれからも現れるだろう。明治大、立教大、関西学院大、同志社大、立命館大の1年生が附属校時代からの勉強が実を結び合格しても不思議ではない。

 だが、このような「高大接続」が法曹養成を担っていいのだろうか。 自然科学系で数学、物理などの天才たちが高校時代に大学院レベルのテーマに取り組むのは理解できる。 だが、法律は身近なもめ事から国の根幹を揺るがす問題を解決するためにある。法律の条文を、数学の公式を覚えるように暗記すればいいというものではない。なぜ、このような法的判断が必要なのか。それを説明するためには相当な社会性が求められる。それは幅広い教養、知識を身につけ、さまざまな人生経験を積んだ上で培われるものではないのか。

 司法試験に合格できれば、事件や事故など、各種トラブルについて条文にあてはめて法的判断を下すことはできる。だがそれを、社会性が十分に備わっていない、かなり若い世代、極端な場合は、十代に任せていいのか。少々、不安になってくる。

 少子化は法曹の世界にも及んでいる。司法試験出願者数は減少傾向にあり、2010年1万1127人→2015年9072人→2020年4226人→2025年3837人というように、かなり深刻な問題となっている。 法曹希望者は15年で三分の一以下に減ったが、合格者数は1500人台を推移しており、法曹界からは質的な面を懸念する声が出ている。一方で、高校時代から司法試験受験に取り組む若く優秀な人材が出てくることは、法曹界にすればとても嬉しい話だ。

 高校生が法曹を志すのは歓迎すべきことである。だが、「高大接続」されているため、かなり早期に司法試験受験資格を付与するのはいかがなものだろうか。司法試験予備試験および司法試験の受験資格に○○歳以上という年齢制限を設けるべきではないが、司法修習所入所の年齢を引き上げてもいい、と思う。

 2024年に筑波大学附属駒場高校2年生、2022年には高校3年生が司法試験に合格している(それぞれ高校1年、高校2年で司法試験予備試験に合格という、とんでもない天才)。彼らに多くを期待したいが、司法修習所への入所はたとえば20歳以上にしてもいいのではないかと、わたしは考えている。

 法曹養成の「高大接続」については、大学入試がない分、早期に司法試験の勉強ができる、という発想に基づくものには賛同できない。司法試験の勉強で、高校の他の教科の勉強が軽視されたり、部活動や遊びを含めたさまざまな経験が蔑ろにされたりするのはもったいないからだ。法曹養成ではなく、法律への誘いから「高大接続」はあっていい。法学部教授の出前授業を行う、模擬裁判を実施するなどで、高校生の知見を広げられる。 司法試験18歳合格はほんとうにいいのか。天才ならば早ければ早いほうがいいという観点から脱却して、法曹養成のあり方を考えてほしい。

教育ジャーナリスト

小林 哲夫さん

1950年神奈川県生まれ。教育ジャーナリスト。朝日新聞出版「大学ランキング」編集長(1994年~)。近著に『日本の大学』(朝日新聞出版、米澤彰純氏との共著)。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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