文部科学省が11月26日に公表した今春2025年度入試結果の総括表を見ると、大学入学者数は前年より約3万5,000人増加しています。18歳人口が一時的に増加したとは言え、定員割れや女子大の募集停止がメディアで報じられていることとのギャップを感じます。ところで、この資料からは、一般選抜の合格者数と入学者数が分かりますので、入学者数÷合格者数のいわゆる歩留率が計算できます。それを見ると、ここ数年、低下を続けていた私立大学の一般選抜の歩留率はわずかながらも上昇しています。

1%とは言え、アップした私大の歩留率
私立大の一般選抜は、併願者も多いことから、多くの大学では合格者の多くが入学しません。一時的に入学手続きをしても、志望度が高い他の大学に合格すると入学を辞退します。私立大学間での併願も多いですが、特に難関私立大の場合は3月に発表される国公立大の合格発表後に国公立大合格者が入学を辞退します。この時、授業料は返還されますが、多くの場合、入学金は返還されません。いわゆる入学金二重払い、入学金返還問題です。
そもそも私立大一般選抜の場合、合格者が入学する率は国公立大と比べると低い率になっています。文部科学省「令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要」(以下、実施状況概要)をもとに経年比較で一般選抜の結果を見ると、私立大と国公立大の差は歴然としています。この15年間を見ても、私立大一般選抜の入学者数÷合格者数のいわゆる歩留率は低下し続けていました<図>。図にはありませんが、2000年前後は私立大一般選抜の歩留率が40%近かったことを考えるとかなりの低下だということが分かります。ただ、それが今春の2025年度入試結果ではほぼ8年ぶりに上昇しました。わずか1%とは言え、上昇に転じたことはこれまでとは状況が変化したことを示しているのではないでしょうか。

私立大の歩留率が回復した理由は色々と考えられると思います。例えば、総合型・学校推薦型選抜(総・推入試)による入学者が増えたことで、もともと歩留率が低い一般選抜の受験生が減った、などです。ただ、今回の資料によると私立大一般選抜の志願者数、受験者数はともに増えています。延数とは言え、私立大一般選抜の志願者数は約25万人以上増えています。では、何が変わったかと言えば、合格者数です。私立大一般選抜の合格者数は昨年より約8,500人減っています。合格者数が減れば、一般的には歩留率はアップします。それでは、この減った合格者はどの層なのかというのが私立大全体の歩留率に関係していると思われます。
【文部科学省】令和7年度国公私立大学・短期大学入学者選抜実施状況の概要(2025年11月26日)
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2020/1414952_00009.html
難関私立大の合格者数減少が歩留率を押し上げた?
私立大一般選抜の合格者数が減ったことは分かりましたが、どの層で減少しているのかは実施状況概要では分かりません。そこで別の私立大一般選抜の入試結果の集計資料を見てみます。河合塾が提供する大学入試情報サイトKei-Netには、2025年度入試結果を集計した資料が掲載されています。その中で「私立大 入試結果(全体概況・地区別・学部系統別・主要大グループ別)」というクロス集計があります。「グループ」というのは、とても穏やかな表現ですが、入試難易度のレベル別大学群に近い意味合いがあると思われます。
この集計を見ると、「早慶上理」と近畿地区の「産近甲龍」は合格者数が増えていますが、それ以外の難関私立大は首都圏、近畿圏以外の都市部でも合格者数が減少しています。「早慶上理」と「産近甲龍」も共通テスト利用方式で合格者数が増えているため全体として増加していますが、一般方式は2,000人~3,000人程度の規模で合格者数が減っています。一般方式だけを見ると「MARCH」で約3,000人減、「日東駒専」で約5,000人減、「関関同立」で約2,000人減となっています。これら難関私立大の合格者数減少が他の私立大の歩留率アップに影響していると考えられますし、合格者数が減少すればこれら難関私立大の歩留率もアップします。
では、次の問いとして、なぜ難関私立大の合格者数は減少しているのか、なのですが1つには、総・推入試の志願者数・入学者数の増加があると思います。総・推入試での入学者数が増えれば、一般選抜の合格者数は減らすことになります。それからもう1つ考えられるのは、新学部の設置です。来年2026年度入試でも立教大、東京理科大、立命館大などの難関私立大が新しい学部を設置します。さらにその先の2027年以降も難関私立大ですでにいくつかの新学部構想が公表されています。新学部を設置する際のルール(というか規制)の1つとして、入学定員の超過率があります。収容定員の超過率が基準の値を超えていると、設置が認められません。こうしたことから今後の予定も含めて、新学部の設置を行う難関私立大の一部が調整のために、合格者数を減少させているのではないかと考えられます。
【河合塾大学入試情報サイトKei-Net】一般選抜 入試結果 集計データ
「私立大 入試結果(全体概況・地区別・学部系統別・主要大グループ別)」
https://www.keinet.ne.jp/exam/past/
国公立大で5,000人超の定員超過、小規模私大の20数校分
実施状況概要を見ると、募集人員と入学者数の差(過欠員)が分かります。総括表(国公私立大全体)を見ると約63万5,000人の募集人員(一般選抜を含む全選抜方式計)に対して、入学者数は約64万8,000人ですので、約1万3,000人の超過となっています。定員割れや募集停止となる大学がある一方で1万人以上の超過というのは競争の厳しさを示す数字だと思います。

さて、問題はこの超過人数の内訳です。私立大の超過人数は約7,700人ですが、国公立大合計で約5,500人となっています<表1>。私立大の規模を入学定員で見ると、入学定員区分で最も多いのは100人~200人規模、次に多いのは200人~300人規模の入学定員の大学です(日本私立学校振興・共済事業団「私立大学・短期大学等入学志願動向 令和7年度」より)。つまり入学定員200人規模の小規模私立大27.5大学分の入学者が、国公立大に入学できていることになるため、受験生にとっては非常に良いことです。ただ、厳しい競争環境におかれた小規模私立大からすれば、かなり複雑な思いでこの5,500人を見ていると思います。

超過人数の多い国公立大を見てみると都市部の大学が目立ちます<表2>。都市部には有力な私立大がありますので、それらの大学との競争関係を勘案しながら歩留率を予想することは難易度が高いのかも知れません。また、これに加えて、公立大学では中期日程を実施している大学が目立ちます。中期日程も年度によって併願者の動向が大きく動きますので、これもまた歩留率の予想は難しいと思います。
ところで、国立大学の場合は、収容定員を超過した率が110%を超えるとその分の授業料収入相当額を国庫に納付しなければなりません。光熱費をはじめ物価高騰のおり、国立大学にとってはなかなか厳しいルールなのですが、各国立大学の今年の入学定員超過率を見るとほぼ110%未満となっています。厳しい環境におかれつつ各大学ともさすがにクレバーな対応だとも言えますが、現在の国立大学の研究環境を考えれば一紙半銭・・・なのかも知れません。
【日本私立学校振興・共済事業団】私立大学・短期大学等入学志願動向 令和7年度
https://www.shigaku.go.jp/s_center_d_shigandoukou.htm
※国公私立大学入学者実施選抜状況の資料には、「2025年度の数値には外国人留学生を対象とする選抜を含んでいるため、2024年度入学者選抜の数値との比較はできない」「2025年度大学入学者選抜実施要項より、各選抜区分の選抜の実態との整合性を図る観点から従来の「一般選抜とそれ以外」という整理を改め、「一般選抜」「総合型選抜」「学校推薦型選抜」に再整理したことから、2024年度入学者選抜の数値との比較はできない。」と注釈がありますが、このコラムでは資料の数値のまま前年と比較しています。