国公立大の志願者数も確定し、私大入試も前半日程のピークを越え、これからいよいよ国公立大学の二次試験と私大入試後半を迎えます。私立大の場合はまだこれから志願者数は増えていきますが、現時点での集計値が河合塾の情報サイトで公開されています。それによると難関国立大は志願者数が減少している一方で、主要私立大の多くは志願者数が増加しており、集計途中とは言え、昨年の倍以上となる志願者数を集めた私立大も見られます。

 

共通テスト平均点ダウンも影響か、難関国立大は志願者減少傾向

 2026年度国公立大学の志願状況について、出願最終日の各大学の公表値を河合塾が集計して、情報サイト(Kei-Net Plus)で公開しています。まだ確定値ではありませんが、前期日程で合計20万人を超えていますので、傾向を見るには十分な数字です。これを見ると、国公立大学全体では昨年比99.8%ですので、ほぼ昨年並みの志願者数です。その中で公立大学の中期日程で志願者数の増加が目立ちます。大学入学共通テストの平均点が昨年よりダウンしたこともあり、受験生は出願できる機会をフルに活用しているものと考えられます。この傾向は昨年2025年度入試でも同様に見られました。

 中期日程は仕組み上、どうしても予想ボーダーラインが高くなりますが、実際は前期日程合格者がほぼ全て抜けていきますので、終わってみれば意外にボーダーラインは高くなかったということが起きます。受験生側もそれを見越しているのだと思いますが、それでも出願する大学は慎重に選んでいますので、特定の大学に志願者が集中する現象が毎年のように見られます。今年の中期日程は昨年より、集計時で860人増加していますが、この増加分のうち約半数は大阪公立大工学部です。このほかでは静岡県立大薬学部、公立小松大が、昨年より大幅に志願者数が増えています。中期日程の志願者数増加はほぼこの3大学の影響です。

 難関国立大の動向は、大学によって差はあるものの、全体として志願者数は減少傾向です。前期日程の志願者数が、現時点で昨年を上回っているのは、北海道大と一橋大と大阪大だけです。東京大はほぼ昨年並みですが、東京科学大は昨年の数字を10%以上割り込んでいます。ただ、一橋大と神戸大は共通テストの自己採点集計の時には、志望者数が増えており、難化するのではないかと予想されていましたが、結果として一橋大は予想ほどは志願者数が増えず、神戸大は志願者数は減少しています。昨年はこれらの難関国立大学に続く、筑波大、千葉大、東京都立大、横浜国立大といった大学の前期日程で志願者数が増加しましたが、今年は現時点では傾向が異なり、千葉大が昨年をやや上回っているぐらいです。難関国立大学志望者そのものが減っているのか、あるいは別の大学に出願しているのか、現段階では分かりませんが、自己採点集計の結果によって、出願校を当初の志望校から変更する動きが年々強くなっているような印象があります。

【Kei-Net Plus】大学入試情報
https://www.keinet.ne.jp/teacher/exam/

主要私立大は軒並み志願者数が増加

 一方で私立大の志願者数は、一般方式も共通テスト利用方式も増加しています。主要74大学のみの集計とは言え、この74大学が600校を超える全私立大の一般選抜志願者数のうち約7割を占めていますので、ほぼ全体の動向を示していると考えても良いでしょう。河合塾集計(2月13日現在)では、大学グループ別と学部系統別にも集計されていますので、全体像をつかむことができます(有難いことにデータでもダウンロードが可能です)。

 大学グループ別にみると最難関の「早慶上理」とそれに続く「MARCH」、「成成明國武」、「日東駒専」など全グループで志願者数が大幅に増加しています。近畿地区最難関の「関関同立」とそれに続く「産近甲龍」も増えています。なお、主要私大の志願者数は、大学通信ONLINEでも随時更新されており、ここでは入試方式別等の内訳も出ていますので、関心のある方はこちらも併せて確認すると良いでしょう。

 また、学部系統別にみると人文系では、「文・人文」、「外国語」、「神・仏教」、「国際」で増加が目立ちます。社会科学系では「法」が増加しています。「経済・経営・商」も当初の予想通り増加しており、意外(?)なことに「社会福祉」も増加しています。理系では「工・理工」、「農・獣医」が増加しています。医療系では予想された通り「歯」が増加しており、ここ数年は不人気だった「看護」も増加しています。ただ、「看護」は人気が戻ったと言うより、看護系の新増設学部学科が多いことが影響していると考えられます。「生活科学」もここ数年、不人気の学部系統でしたが一転して増加しています。ただ、これも特定の女子大の新学部設置の影響が大きいと見られます。特に従来の栄養系の学部学科が「食科学」系の新学部に改組される例が相次いでおり、農学系志望者の一部がそこに流れていると思われます。

【大学通信ONLINE】2026年 入学志願者速報
https://univ-online.com/exam/

芝浦工業大、東京理科大の共テ方式が大幅増、摂南大は昨年の倍以上

 志願者数の増加が目立つ私立大は、新学部を設置したり、学科を改組して新学科を増やしたりしています。亜細亜大(健康スポーツ科学部)、成蹊大(国際共創学部)、立教大(環境学部)、立命館大(デザイン・アート学部)、近畿大(看護学部)、桃山学院大(工学部)などです。新学部を設置すると、その新学部の志願者数がそのまま増加分となることに加えて、既存の学部との併願者も増えるため、大学全体の志願者動向に好影響を与えます。

 そのほかで目立つところでは、芝浦工業大と東京理科大がいずれも共通テスト利用方式で昨年の1.5倍以上(芝浦工業大は1.8倍!)の志願者数を集めています。両大学とも従来から共通テスト利用方式を実施していましたが、各方式で課す教科数を複線化することで、受験パターンを増やしたことが好影響していると見られます。さらに増加が目立つのは摂南大です。「産近甲龍」に続く「摂神追桃」グループのうちの1大学ですが、大学全体では昨年比230%を超えています。つまり、現時点ですでに昨年の2倍以上の志願者数になっています。最初は数字の見間違いかと思いましたが、入試方式を増やすなどして、受験機会を増やしたことが好影響していると見られます。

 ところで、経験則ではあるものの、だいたい入試の種類や方式数を3倍程度に増やすと志願者数を2倍近くまでに引き上げることができます。ただし、それはどの私立大でも可能という訳ではありません。受験生から安定した支持のある大学のため、それが可能になっていると言えるでしょう。

 そのほかでは、昨年、一般選抜の志願者数が日本一になった千葉工業大は現時点の集計で昨年の同時期を超えています。今年も全国最多の志願者数となるかどうか、これからの動向が注目されます。また、日本大の志願者数も昨年に続いて増加しており、数年ぶりに10万人台に届きそうな状況です。いずれにしても、私立大の志願者数の全体像が見えてくるのは3月中旬ごろになる見込みです。

神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンス(河合塾グループ)で入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査等を行うほか、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援なども行なっている。
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