獨協大学外国語学部ドイツ語学科・フランス語学科では2025年から新たな入試方式「Q(課題探究)入試」を導入した。探究課題の提出、プレゼンテーション、面接から成る年内入試だ。学力評価型の年内入試が全国的に広まるなか、あえて時代と逆行するようなQ入試を選んだのはなぜだろうか。指物敏一入試課長に、Q入試の狙いや成果を伺った。

 

積極的な受験生を募りたい。Q入試導入の背景

 「Q(課題探究)入試」は2025年入試から、外国語学部ドイツ語学科・フランス語学科で導入された。その背景には、これまでの入学者の傾向があったという。

「ドイツ語学科とフランス語学科を第一志望にしている人が少ない、と感じていました。もしかするとほかの大学や学部よりも比較的入学しやすいから、という安易な、妥協した理由で選んでいないか。そうした消極的な理由ではなく、自分の志望する学科は、どれくらい本当に行きたい所なのか、事前に自らその問いについて考えてもらえるような入試にしたい、と考えました。そのために事前にじっくりと時間をとって探究課題に向き合い、自分の言葉で書いてもらう時間を設けています。そして本当に自分はこの学科で学びたいと納得したら、願書を出してもらえたらと思います。自分なりにじっくり考えた答えを、自分の言葉で表現するプレゼンテーションが当日の試験に含まれているのも、この入試制度の特徴の1つです」

 Q入試は「課題探究入試」と銘打っているように、高校での探究学習の成果を評価する内容だ。6月に発表されるテーマに対して探究を行い、その成果を約3,000字程度にまとめて出願時に提出。10月末に実施する試験では、探究した内容に関する10分間のプレゼンテーションと、教員との20分間の面接を行う。

 2025年入試で出されたテーマは、ドイツ語学科が「ドイツ語圏についてあなたが興味をもっている事柄を一つ取り上げ、日本と比較しながらその特徴を論じなさい」、フランス語学科が「フランス語圏に関連してあなたが興味をもっている事柄について、あなた自身の経験をふまえて論理的に説明しなさい」。探究をしているうちに、受験生自身もドイツ語圏やフランス語圏への興味が本当にあるのかを確認できる。

 2022年度に実施された「高等学校学習指導要領」の改訂も、Q入試の方向性を決めるうえで大きな影響を与えたという。新課程では「総合的な探究の時間」が必修に。テーマについて情報収集をしてまとめたり、解決策を考えたりといった学習が行われるようになった。また、日本史と世界史を横断的に学ぶ「歴史総合」も必修化。さらに探究を続け「日本史探究」や「世界史探究」を学んでいく。

「2025年入試で入学したQ入試一期生は、高校で新課程を学んだ学生たちです。つまり高校1年生のときから、探究学習を経験しています。せっかくならば、学力試験以外の形でその力を活かしてもらおうと考えました。また、『歴史総合』などでドイツ語圏やフランス語圏の歴史に触れ、興味を持つ機会もあったでしょう。そのうえで本当にドイツ語やフランス語を学びたいのか、探究を通してじっくり考えてもらおうと意図しました。探究学習と大学入試の接続をしたいと考えたのです」

 探究の力は受験だけでなく、入学後も大いに役立つ。ゼミナール教育に力を入れている獨協大学では、興味のある分野に対して問いを立て、主体的に答えを求めていく機会が多いからだ。

「Q入試一期生が入学したばかりではありますが、今後の活躍に期待しています。熱意と意欲のある学生ばかりなので、周りの学生も刺激を受けるのではないでしょうか」

「年内学力入試」解禁は、Q入試に影響を与えるのか?

 獨協大学の動きとは対照的に、全国的には「学力評価型の年内入試」が広まろうとしている。文部科学省も方針を改め、2026年度から条件付きで容認する意向だ。早いうちに進学先を決めておきたい、滑り止めの大学を年内に確保して年明けの入試に備えたい、と感じている受験生や保護者も多いだろう。しかし指物入試課長は、だからこそQ入試の存在意義が高まると考えている。

「Q入試は課題探究のために準備の時間が必要ですし、個人の熱意をじっくりと見る総合型選抜です。合格発表後、年内に入学手続きが必要なので、滑り止めという感覚で受けるわけにはいきません。だからこそ、本当にドイツ語学科とフランス語学科で学びたいという人が試験を受けてくれるはずです。これは本学の建学の理念『大学は学問を通じての人間形成の場である』とも合致しています。大学で学問に励みたい人を募り、人間形成をしていきたい。このポリシーを理解していただける受験生に、Q入試で出会いたいと思います」

 Q入試で年内合格を決めた学生には、入学前教育も行う。英語のeラーニングに加え、ドイツ語学科ではドイツ語圏に関する学び、フランス語学科では文章要約力を身に付ける課題などの内容だ。大学での勉強に備える助走期間は、十分に確保されている。

2025年入試は予想以上の成果に。2026年入試には変更点も

 2025年入試の倍率は、ドイツ語学科が1.6倍、フランス語学科が1.5倍という結果に。Q入試の実施概要発表が6月だったにもかかわらず、予想以上に多くの応募があった。

「おそらく3年生は一般入試に向けて受験勉強をしていたと思うので、急に課題探究に取り組んでもらうのは難しいと考えていました。ですから、予想以上に多くの方が受験してくれて驚きましたね」

 2026年からはさらに受験生が増えると見込んで、入試方法に一部変更を加えた。事前に提出する課題を一次選考として設定。一次選考の通過者のみが、二次選考のプレゼンテーションと面接へと進む。しかしむやみに一次選考で不合格者を出そうとは考えていない。あくまでも、ひとりひとりをじっくり見る時間を確保するためだ。

「明らかに自分で書いていない、課題の内容が趣旨から大きく外れている、といったものを除いては、可能な限り二次試験を受けてもらいたいと考えています。なるべく多くの意欲ある学生に出会いたいですし、熱意を直接聞きたいからです」

 Q入試の成果を受け、他学科でも導入を検討する動きが出始めた※。各学科のカリキュラムやポリシーに合致した受験生を募集する入試方式のひとつとして、学内でも評価が高まっている。受験生、選考を行う教員双方に熱意が求められるからこそ、入学後の学問とのミスマッチも防げるだろう。
※2027年度はドイツ語学科、フランス語学科の実施です。

「大学の名前だけで入学してしまうと、学問の内容が自分の興味とは違って楽しめないかもしれません。だからこそ高校生には、4年間当にやりたいことを考えて進学してもらいたいです。保護者の方は、お子さんがどんなことを学びたいのかを一緒に考えて、受験先を選んでいただければと思います。興味のある内容を学ぶことが大学生活を楽しく、充実したものにするでしょう。そのことが、就職活動においても良い結果をもたらすはずです」

 Q入試は11月に実施する自己推薦入試または卒業生子女・弟妹入試との併願※が可能だ。検定料はいずれの入試も35,000円。Q入試で合格した場合は、併願していた入試制度の検定料が返金される。自分自身の熱意を確かめ、入学のチャンスを増やす入試方式として、Q入試に注目してみてはいかがだろうか。
※Q入試と同一学科に限る。

獨協大学 入試部入試課長

指物敏一(さしもの・としかず)

大手予備校、受験媒体を扱う広告代理店を経て、2006年獨協大学入職。2019年より現職。

 

獨協大学

ドイツで誕生した少人数制のゼミナール教育。独自のプログラムで国際人を育成

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