通信制大学で資格取得を目指す際の注意点と学び方

 通信制大学では、大学卒業資格である学士の取得だけでなく、教員免許、社会福祉士など、仕事やキャリアにつながる資格を目指すことができます。すでに大学や短期大学を卒業している人が、必要な科目を中心に履修する方法もあります。

 ただし、資格によって必要な科目、実習、スクーリング、試験、申請手続きなどは大きく異なります。「通信制だから自宅学習だけで資格が取れる」「大学に入れば自動的に資格がもらえる」とは限りません。大切なのは、資格名だけで大学を選ぶのではなく、自分の最終学歴、過去に修得した単位、保有資格などを確認し、資格取得までのルートを逆算することです。

資格には、それぞれ異なる取得の仕組みがある

 通信制大学で取得や受験資格の取得を目指せるものには、教員免許、社会福祉士、精神保健福祉士、司書、学芸員、認定心理士などがあります。大学によっては、保育士、司書教諭、特別支援学校教諭などに関する課程を設けている場合もあります。

 ただし、これらはすべて同じ種類の資格ではありません。資格には、大学で定められた科目を修得し、所定の申請を行うことで取得を目指すもの、大学で必要科目や実習を修了した後に国家試験を受験するもの、特定の職務に就いた際に効力を持つ任用資格、学会や団体が一定の学修歴を認定するものなどがあります。

 例えば、社会福祉士や精神保健福祉士を目指す場合、大学で指定科目や実習を修了することは、資格取得の途中段階です。その後、国家試験に合格しなければ資格は得られません。一方、司書や学芸員などは、所定の科目を修得することが資格取得の中心となります。ただし、資格を得ることと、実際にその職種へ就くことは別の問題です。求人数や採用方法についても調べておく必要があります。

 また、「心理学を学べる大学」であっても、希望する心理系資格に対応しているとは限りません。「資格対応」「受験資格」「任用資格」「認定申請が可能」など、大学案内にどのように記載されているかを確認しましょう。

資格ごとに科目、演習、実習が異なる

 資格取得を目指す場合、興味のある科目を自由に選ぶだけではなく、定められたカリキュラムに沿って履修する必要があります。

 教員免許では、希望する学校種や教科に応じた専門科目、教職に関する科目、教育実習などを履修します。すでに別の教員免許を持っている人、過去に教職課程の一部を履修している人、教員としての勤務経験がある人などは、必要な科目や手続きが異なる場合があります。

 社会福祉士などの資格では、指定科目に加え、演習や実習が必要です。実習を受ける前に、特定の科目を修得しておかなければならないなど、履修する順序が決まっている場合もあります。

 この順序を十分に確認せず、実習の前提科目を取り忘れると、資格取得が予定より遅れることがあります。科目一覧だけを見るのではなく、大学が示している履修モデルや資格取得までのスケジュールを確認しましょう。特に注意したいのが実習です。教育実習や福祉実習は、平日を含む一定期間、学校や施設へ通うことが一般的です。勤務先や家庭の予定とは別に、まとまった時間を確保する必要があります。

 実習先を大学が決めるのか、学生自身で探すのか、居住地の近くで実施できるのかも大学によって異なります。仕事を休む必要があるか、交通費や宿泊費がかかるかも含めて考えておきましょう。

正科生、編入学、科目等履修生の違いを知る

 通信制大学には、目的や学歴に応じた複数の学び方があります。正科生は、大学の卒業を目指して学ぶ学生です。必要な単位を修得し、卒業要件を満たすと、学士の学位を取得できます。高校卒業後に大学卒業資格と資格取得の両方を目指す人や、別分野の学問を基礎から学びたい人に向いています。

 大学や短期大学などで修得した単位がある人は、2年次や3年次へ編入学できる場合があります。編入学では、すでに修得した単位の一部が卒業単位として認定されるため、1年次から入学するよりも短い期間で卒業を目指せる可能性があります。ただし、編入学したからといって、資格取得に必要な期間まで必ず短縮されるとは限りません。資格科目や実習科目は、卒業に必要な単位とは別に履修しなければならないことがあるためです。

 科目等履修生は、大学卒業を目的とせず、特定の科目を選んで履修する制度です。すでに大学を卒業しており、教員免許取得のために不足している科目を学びたい場合などに利用されます。ただし、科目等履修生では実習を履修できない、資格に必要な科目の一部しか受講できない、正科生として一定期間在籍する必要がある、といった制限が設けられている場合がありますから注意しましょう。「必要な科目だけ取ればよい」と自己判断するのは危険です。過去の成績証明書や単位修得証明書を準備し、自分がどの制度を利用できるか大学へ相談しましょう。

 「1科目から学べる」のが科目等履修の最大のメリットですから、「正科生として入学して4年間続けられるか不安だ」という通信制大学での学び初心者にとっては、「通信制大学を試しに1科目だけ履修してみよう」という使い方をすることもおすすめです。

教員免許は大学と教育委員会の両方を確認する

 教員免許を目指す人は、大学への確認に加え、必要に応じて都道府県教育委員会にも相談することが大切です。教員免許状は、大学を卒業しただけで自動的に交付されるものではありません。必要な単位を修得した後、原則として教育委員会へ申請し、免許状の授与を受けます。どの科目が必要になるかは、取得したい免許状の種類、過去の学歴、保有している免許状、修得済みの単位、勤務経験などによって異なります。大学が一般的な履修モデルを提示していても、それがすべての人にそのまま当てはまるとは限りません。

 特に、すでに教員免許を持っている人が別の校種や教科の免許を追加したい場合、大学で履修すべき科目について、教育委員会の確認が必要になることがあります。大学のウェブサイトに「教員免許取得可能」と書かれていることだけで判断せず、自分の場合に必要となる単位と申請方法を個別に確認しましょう。

資格取得までの期間と学修方法を確認する

 資格取得に必要な期間は、現在の学歴、保有資格、過去に修得した単位によって異なります。数科目の履修で済む人もいれば、大学卒業資格とあわせて数年間学ぶ人もいます。また、実習科目や一部の専門科目が年1回しか開講されない場合、履修の時期を逃すと資格取得が1年延びる可能性があります。何年で取得できるかを見るときは、最短期間だけでなく、自分の生活や仕事と両立できる現実的な期間を考えましょう。

 通信制大学の授業には、教科書や動画教材を使った自宅学習、レポート提出、オンライン授業、会場やキャンパスで受講するスクーリング、単位認定試験などがあります。資格系の科目では、対面による演習や実技が必要になることもあります。「通信制」という言葉から、すべて好きな時間に自宅で学べると考える人もいますが、提出期限や授業日程、試験日は決まっています。仕事の繁忙期、育児や介護、実習期間などを考え、無理のない履修数を設定することが大切です。早く資格を取りたいからと科目を詰め込みすぎると、レポートや試験に追われ、途中で継続が難しくなることもあります。

 大学を比較するときは、標準的な修業期間だけでなく、履修科目数を途中で調整できるか、長期的に学べる制度があるか、履修相談を受けられるかも確認しましょう。

資格取得実績は、数字の中身まで見る

 大学を選ぶ際、資格取得者数や国家試験合格率は参考になります。ただし、数字だけを単純に比較するのは注意が必要です。合 格率を見るときは、誰を母数としているのかを確認します。入学者全体に対する割合なのか、受験資格を得た人のうち実際に国家試験を受験した人の割合なのかによって、数字の意味は異なります。

 新卒者だけの合格率なのか、既卒者を含むのかによっても結果は変わります。また、資格取得者数が多い大学でも、在学生数そのものが多ければ、割合として高いとは限りません。初心者がすべての数字を細かく分析するのは難しいかもしれませんが、「合格率が高い」という表示だけで決めず、対象者や算出方法を確認する姿勢が大切です。

 あわせて、実習支援、国家試験対策、質問対応、履修相談、卒業までのサポート体制も見ておきましょう。資格取得に強い大学とは、授業を提供するだけでなく、学生が資格取得まで歩き続けられる仕組みを持つ大学でもあります。

「資格が取れる」と「その仕事に就ける」は別

 資格を選ぶときは、取得方法だけでなく、取得後にどのような仕事や働き方があるのかも調べておきましょう。例えば、教員免許を取得しても、公立学校の正規教員になるには教員採用選考などを受ける必要があります。私立学校、非常勤講師、臨時的任用など、働き方によって採用方法も異なります。社会福祉士も、福祉施設、医療機関、行政、社会福祉協議会、相談支援機関など、勤務先によって仕事内容が変わります。資格を生かせる求人が、自分の希望する地域や勤務条件にあるとは限りません。司書や学芸員なども、資格取得者数に対して正規職員の募集が限られることがあります。「好きな分野だから資格を取りたい」という動機は大切ですが、取得後の就職や活用方法も現実的に調べておきましょう。

 資格によっては、登録手続き、研修、実務経験などが必要になる場合もあります。資格取得をゴールとせず、その後の仕事、収入、働き方、現在の経験との組み合わせまで考えることが重要です。

 通信制大学は、生活や仕事を続けながら専門知識を学び、資格やキャリアの可能性を広げられる有力な選択肢です。しかし、資格名から学校を選ぶのではなく、自分の学歴と修得済み単位から、資格取得までの道のりを逆算する必要があります。資料請求、説明会、個別相談を活用し、「入学できるか」だけでなく、「必要な科目を履修し、実習を終え、資格取得まで到達できるか」を確認してからスタートしましょう。

文:たねとしお

社会人大学院や通信制大学など、社会人向け学習情報誌・WEBサイトの編集に長く携わる。「仕事力」をテーマにした新聞連載をはじめ、これまでに累計5,000人以上にインタビューを行う。会社経営の傍ら社会人大学院に通学し、2024年にMBAを取得。「学びで人生を豊かに生きる」をテーマに、社会人の学びに関する発信活動を行っている。インターネットラジオ「ゆめのたね放送局」『社会人大学院へ行こう』番組パーソナリティ。株式会社案 代表取締役社長。学校経営ディレクター(京都大学私学経営アカデミー)。

 

大学ジャーナルオンライン編集部

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