東京大学の水野英如助教、池田昌司准教授、および東北大学の芝隼人特任助教は、ガラスと通常の固体では振動特性が本質的に異なることを発見した。

 固体を叩くと音が出るが、これは固体に固有な分子振動のパターンが音波であるためだ。音波は空間的に広がった波であり、「デバイ則」(音波の数が周波数の2乗に比例)と呼ばれる法則に従う。しかしガラスにはデバイ則では説明できない振動パターンがあることが古くから示唆されてきたが、それがどのようなもので、どのような法則に従うかは不明だった。

 今回の研究では、大規模なコンピュータシミュレーションを行い、ガラスに固有な振動パターンを解明することに成功した。具体的には、分子一つ一つを扱う分子シミュレーションを行うことにより、ガラス中での分子の振動パターンを詳細に調べた。

 その結果、ガラスには音波に加えて、音波とは全く異なる、空間的に局在化した振動があることを発見した。その振動パターンは、空間的に局在化した振動、すなわち空間中のある一部の分子が大きく振動する一方で、他の分子はほとんど振動しない振動パターンであることが分かった。

 さらに、この局在振動は、デバイ則とは異なる全く新しい法則に従うことが判明。すなわち、ガラスにはデバイ則に従う音波と、それとは別の法則に従う局在振動が混在していることが確立された。

 この結果は、ガラスが通常の固体とは本質的に異なることを決定的に示している。今回の成果は、長年論争となっていた、ガラスの振動特性の問題に終止符を打つとされる。さらに、ガラスの熱的・力学的性質の基礎理解が大きく進展し、新しいガラス材料を開発する技術へつながるものと期待できる。

論文情報:【Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America】Continuum limit of the vibrational properties of amorphous solids

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

東北大学

イノベーションの源泉となる優れた研究成果を創出し、次世代を担う有為な人材を育成

東北大学は、開学以来の「研究第一主義」の伝統、「門戸開放」の理念及び「実学尊重」の精神を基に、豊かな教養と人間性を持ち、人間・社会や自然の事象に対して「科学する心」を持って知的探究を行うような行動力のある人材、国際的視野に立ち多様な分野で専門性を発揮して指導的[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。