九州大学大学院の児玉建氏(博士学生)らの研究グループは、大阪公立大学と共同で、ツクツクボウシのオスに「オーシンツクツク」パートと「ツクリヨーシ」パートを単独で聞かせた時、各パートに対する応答の頻度が異なることと、これらのパートがオスの異なる反応を誘発することを初めて明らかにした。

 セミはオスのみが鳴き声を発する動物で、その鳴き声をオス同士の競争やメスへのアピールに使うとされる。中でもツクツクボウシというセミは、その鳴き声のパターンが「オーシンツクツク」から「ツクリヨーシ」へと途中で変化する極めて珍しい特性を持つ。一方、鳴き声を途中で変化させる生物学的意義は不明だった。

 研究グループは、ツクツクボウシの鳴き声の「オーシンツクツク」と「ツクリヨーシ」の各パートをスピーカーで再生し、捕獲したツクツクボウシのオスに聞かせた。ツクツクボウシは、オスが鳴いている際に近くにいる別のオスが「ギーッ」という”合の手”を入れる。そこで、異なる音声データを再生して合の手の頻度を比較すると「オーシンツクツク」パートを含む音声の方に多く合の手を入れて応答していた。ツクツクボウシの鳴き声のパターンが途中で変わると、他のオスの行動が変化することが初めて分かった。

 今後は、メスの行動反応も評価し、オスの鳴き声が繁殖に及ぼす効果を探る予定。またメスがオスのどのような鳴き声を好むかを調べれば、その複雑な鳴き声の進化に迫れるとしている。また、今回オスが発する合の手のコミュニケーション上の意義は不明だった。オス同士の行動反応の詳細な比較により、オスの鳴き声パートに対する応答の違いの意味の解明が期待される。

論文情報:【Entomological Science】Difference in the responses of male cicada Meimuna opalifera to the two parts of conspecific calling song

九州大学

未来を切り拓く「総合知」を生み出し、社会変革を牽引する大学

九州大学は、12学部19学府を擁する基幹総合大学。世界最高水準の卓越した教育研究活動を展開し国際的な拠点となり得る「指定国立大学法人」として指定を受けました。これまで培い蓄積した人文社会学系から自然科学系、さらにはデザイン系の「知」を組み合わせた「総合知」によ[…]

大阪公立大学

2022年4月、大阪府立大学と大阪市立大学を母体とした「大阪公立大学」が開学

大阪公立大学は、2022年4月より、大阪府立大学と大阪市立大学が統合し開学しました。ともに約140年の歴史ある大学で、12学部を擁す総合大学で、学生数は約1万6千人。全国最大規模の公立総合大学です。大都市大阪に人や社会、都市、世界を結びつける新たな"知の拠点"[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。