東京農工大学の研究で、都市に生息するタヌキが、人間活動の時間的変化に対応して「共同トイレ(ため糞場)」への訪問時間を調整している可能性が示された。
タヌキは、特定の場所に複数の個体が排泄する「共同トイレ」を利用する習性を持つ。共同トイレでの排泄や匂い嗅ぎ行動を通じて、個体間のコミュニケーションを図っていると考えられている。
一方、これらの行動はタヌキにとって無防備な状態となる。同じく無防備となる採食行動については、都市部のタヌキが夜間や周囲からの見通しの悪い場所を選ぶことで人間を避け、都市環境に適応していることが報告されてきた。
そこで本研究では、都市における人間活動が、タヌキのコミュニケーション行動である「共同トイレの利用」にも影響を及ぼしているのかを検証した。
研究グループは、東京近郊の都市緑地である国際基督教大学キャンパス(IC)、東京都立農業高等学校神代農場(JF)、東京農工大学府中キャンパス(TU)の3調査地に存在する計8カ所の共同トイレを対象に、2018年~2019年の延べ4,530日にわたり、自動撮影カメラを用いてタヌキの訪問パターンを観察した。
その結果、訪問の9割以上は夜間に集中していたが、ピークの時間帯は調査地によって異なっていた。森林が広いICでは、日没直後に大きなピークが見られ、多くのタヌキが活動を開始する時間帯に共同トイレを利用していたと考えられた。これに対し、森林面積が限られるJFやTUでは、日没直後や夜明け前に小さなピークが見られ、これらの調査地がタヌキの夜間の移動経路となっている可能性が示唆された。
さらに、同じ調査地内でも、道路に隣接する共同トイレでは、交通量が減る深夜以降にピークが見られるなど、立地条件による違いも確認された。タヌキが人間活動によるリスクとのバランスを取りながら都市環境に適応している可能性がある。
本研究は、人間活動が都市に生息する野生動物の社会性の維持機構にも影響を与えることを示した。今後は、野生動物の採食場所や休息場所だけでなく、共同トイレのような社会性を支える場にも配慮した環境保全が求められる。
