名古屋大学大学院医学系研究科の星野純子准教授、桜井美果博士後期課程学生らの研究グループは、家族を介護している人(家族介護者)が抱く介護の否定的認識(介護役割の負担など)と肯定的認識(介護から得られる喜びなど)の双方が、生活の質に直接的・間接的な影響を及ぼすことを明らかにした。
現行の医療・社会保障制度では、地域で長期介護(支援を受けながら生活すること)を必要とする高齢者やその家族への支援が十分とは言えない。特に、家族を介護する立場となった家族介護者は、介護役割に適応するため生活を再構築することが報告されており、生活の質への影響が懸念される。
本研究では、訪問看護サービスを利用している療養者の家族介護者を対象に、介護に対する否定的認識および肯定的認識と生活の質との関連を横断的に調査した。調査は無記名自記式質問紙により実施し、168人分の回答を解析した。
その結果、「介護役割の負担を感じる」といった否定的認識が高いほど、家族介護者の生活の質が低下することが示された。一方で、「介護を通じて得られる喜び」などの肯定的認識が高いほど、否定的認識は有意に低下することが明らかとなった。これらの結果は、介護に対する肯定的認識を高めることが否定的認識の軽減につながり、結果として家族介護者の生活の質向上に寄与する可能性を示唆している。
さらに、訪問看護師からの支援や介護サービスへの満足感といった外部からの支援が高いほど、介護の肯定的認識が高まることも確認された。つまり、支援体制を充実させることが、間接的に否定的認識の低下につながる可能性も示されたといえる。
本研究により、家族介護者の生活の質を高める支援策を検討する際には、介護に対する否定的認識と肯定的認識の双方の評価が重要であることが示された。家族介護者を支援する医療従事者や地域のケアスタッフは、介護者の両認識のバランスに応じた継続的な支援を行うことが求められる。また、家族介護者が専門職に支援を求めやすい社会環境を整えることも、「住み続けられるまちづくり」の実現に寄与すると期待される。

