東北大学大学院の大石若菜助教、水谷大二郎准教授らは、スウェーデン農業科学大学との共同研究により、汚水処理技術における集中型(下水道)と分散型(浄化槽)の最適な組み合わせを導出する新たな数理モデルを開発した。
戦後に整備が進められた上下水道インフラは、現在、老朽化による更新期を迎えている。一方、人口減少が進む社会を見据えると、現行規模のインフラを維持・更新し続けることは困難になると予想される。そのため、大規模施設の計画的な縮小を進めるとともに、人口が少ない地域では浄化槽などによる個別処理へ移行する必要があると考えられている。
こうした背景を踏まえ、本研究では、下水道インフラの集中型(集合処理)と分散型(個別処理)の最適な組み合わせ(「ベストミックス」)を定量的に算出するための数理最適化モデルを新たに開発した。このモデルは、既存の下水道を更生して維持する場合と、廃止して浄化槽へ転換する場合の双方を対象とし、更新後50年間にわたる更新工事費や維持管理費、温室効果ガス排出量を最小化しつつ、バイオガス回収量を最大化するという複数の条件を同時に満たす最適解を導くことができる。
解析の結果、現状の下水処理システムをそのまま維持した場合、50年間の総費用が最も高くなることが明らかになった。一方、すべての世帯を浄化槽へ転換した場合には、総費用は低減するものの、各戸での処理に伴う温室効果ガス排出量が増加し、環境負荷が高まることが示された。
これに対し、数理最適化によって導出した「集中分散ベストミックス」では、費用と環境負荷の双方を同時に低減できることが明らかとなった。
本研究成果は、人口減少が加速する将来における下水道インフラ更新のあり方を、世界に先駆けて定量的に示したものである。計画的なダウンサイジング(大規模インフラの縮小)と数理的根拠に基づく技術選択により、安全性と快適性を維持しながら、持続可能で高効率な下水処理システムの構築に貢献することが期待される。

