東北大学の研究グループは、腸炎を発症したマウスにおいて、根尖性歯周炎に伴う顎骨破壊が著しく増悪することを明らかにした。さらに、腸管免疫の破綻が顎骨の免疫システムに影響を及ぼすことを解明し、新たな抗炎症治療法を提案した。
腸管免疫はヒト最大の免疫組織であり、これが破綻する炎症性腸疾患(IBD)では、腸炎の発症にとどまらず全身の免疫機能が低下することが知られている。結果として、IBD患者では根尖性歯周炎(AP)が重症化しやすく、治療を行っても歯根尖部の細菌感染に起因する炎症により顎の骨が破壊される「顎骨破壊」が改善しにくいことが報告されている。
本研究では、IBDによって顎骨破壊が増悪する仕組みを解明するため、マウスを用いてAP単独群と、腸炎とAPを同時に発症させた群を比較した。その結果、AP単独群の骨破壊体積が平均0.2mm3ほどであったのに対し、腸炎を伴うAP群では平均0.6mm3ほどに増加し、顎骨破壊が顕著に悪化していることが示された。
さらに解析を進めたところ、腸炎を伴うAP群では、顎骨内の好中球と呼ばれる免疫細胞が異常に活性化していることが判明し、これが顎骨破壊の増悪の原因であることを突き止めた。
加えて研究グループは、顎骨内で病的に活性化された炎症反応を抑制する新たな治療法として、キャビテーション(急激な圧力変動により気泡が発生・崩壊する現象)を応用した薬物送達技術を開発した。好中球の活性を抑制する抗炎症薬を根管(歯の根の中)に投与し、キャビテーションを誘導することで、薬剤を顎骨まで直接浸透させ、骨破壊を抑制できることを示したという。
本研究により、腸管免疫の破綻が顎骨の免疫応答にも影響を及ぼし、顎骨破壊を増悪させるというメカニズムが明らかとなった。これまで有効な治療法がなかった「腸炎によって悪化するAP」に対し、新たな抗炎症治療の可能性が示された。今後は、顎骨破壊の増悪を判定する診断技術の開発や、キャビテーション技術の臨床応用に向けた研究の進展が期待される。
