東北大学大学院の東谷篤志教授と JAXA宇宙環境利用推進センターの東端晃らの研究グループは、若田宇宙飛行士が「きぼう」で実施した線虫実験により、神経シナプス伝達の低下と、刺激を感受する複数のメカノ受容体遺伝子の発現低下の可能性があることを明らかにした。

 宇宙の無重力環境では、自重を支える必要がなくなるため、宇宙飛行士や宇宙マウスの実験で、骨や筋肉が急速に萎縮することが報告されている。今回、研究グループは、モデル生物線虫C.エレガンスを、宇宙無重力下で育て、小さなプラスチックビーズを加え、触覚刺激の効果を調べた。ビーズを入れないで育成した線虫では、これまでと同様に、運動性の低下やからだの発育の抑制が観察され、さらに新たに成長期の個体において神経シナプス伝達の低下、加齢した個体では、老化に伴うダメージの増加が確認された。

 一方、培養条件にビーズを加えて物理的な刺激を増やすことでこれらのダメージが抑制されることが分かった。また遺伝子発現解析から、宇宙無重力下では、接触などの刺激を感受・応答する複数のメカノ受容体(力・圧力を感知して神経信号や生化学的シグナルに変換するセンサータンパク質)遺伝子の発現が低下し、触覚刺激などの入力そのものが減少している可能性が強く示唆された。

 今回の実験(Neural Integration System(NIS)宇宙実験)は、国際宇宙ステーション(ISS)「きぼう」日本実験棟において、若田光一宇宙飛行士の操作により実施された。今後、人類がより長期間にわたり宇宙滞在や深宇宙探査を行うにあたり、従来指摘されてきた自重の消失や体液シフトに加えて、触覚刺激の低下が新たな健康リスク要因となる可能性が示唆されたとしている。

論文情報:【The FASEB Journal】Reduced Mechanical Tactile Stimulation Under Space Microgravity Affects Synaptic Signaling and Contributes to Neuromuscular Aging in Caenorhabditis elegans

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