大阪大学、大阪市立大学、東京大学の共同研究グループは、カーボンナノチューブから構成される人工原子を作製し、異なる2種類の近藤状態を生成。世界最高水準の電流雑音測定技術により、近藤状態の種類と量子ゆらぎの関係を解明した。

 金属の電気抵抗は、温度の低下と共に減少していくが、ある温度で上昇に転じる。この低温での抵抗増大を示す現象が近藤効果で、金属が含む不純物のスピンと伝導電子のスピンが相互作用して生じる。1964年に近藤淳氏が初めて解明した。近藤効果は、スピンの自由度がゆらぐこと(量子ゆらぎ)が要因だが、電子が運動方向などの自由度も持つ場合、異なる量子ゆらぎが発生し、種類の異なる近藤効果が生じる。自由度がスピンのみの場合はSU(2)近藤効果、自由度が他にもある場合はSU(4)近藤効果などが実現する。

 そこで研究グループは、金属中の不純物に対応するカーボンナノチューブを用いて人工原子を作製。2つの電子が人工原子内にある状態を生成して電子を流した。人工原子内の電子は、スピン自由度の他にチューブに沿った運動方向の自由度を持ったSU(4)近藤状態であることを確認。さらに磁場を加えていき、スピンと磁場の相互作用によってSU(4)近藤状態からSU(2)近藤状態に移り変わっていくことを発見した。この変化は理論計算で再現され、量子ゆらぎの指標であるウィルソン比も算出した。また、電流に含まれる電流雑音も調べ、有効電荷を検出。近藤状態の種類の変化につれて、有効電荷と量子ゆらぎが連続的に変化することを実証した。

 本成果は、超伝導などの量子多体現象の理解と量子ゆらぎの制御につながり、物質の新機能開拓など、物質科学の発展が期待されるとしている。

論文情報:【Physical Review Letters】Quantum Fluctuations along Symmetry Crossover in Kondo-correlated Quantum Dot

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