立正大学経営学部の山本仁志教授、筑波大学システム情報系の秋山英三教授、理工情報生命学術院システム情報工学研究群博士後期課程の梅谷凌平さんらの研究グループは、他者から「奪い取る」という負の行動は、奪い取られた直接的な相手だけでなく、第三者に対しても連鎖的に発生する傾向にあることを明らかにした。
人は他の種と比較して、とても協力的な種とされている。実際に、人には、自分に協力してくれた相手に直接返報する「お返し」や、協力された人が見ず知らずの第三者に協力する「おすそ分け」などの行動がある。協力によって利益を与えた場合、相手からの協力的な返報が生まれる傾向がある一方で、裏切りによって損失を与えた場合には、その相手からの報復を誘発する。しかしながら、自分に損失を与えた相手に直接報復できない場合、見ず知らずの第三者からであっても、失った分を取り戻そうとするのか、また、そうした行動はどの程度連鎖するのか、といった定量的な分析は不足していた。
そこで、研究ではこの課題に対して定量的な検討を行った。その結果、自分の持つ資源が誰かに奪い取られた時、それが意図的な行動であったかどうかに関わらず、その損失を取り戻すために見ず知らずの第三者からでも資源を奪い取る、つまりネガティブな行動は第三者に対しても連鎖することを示した。これまでに研究グループは、おすそ分けのような、第三者に対する協力の連鎖には行動の意図が重要な役割を果たしていることを明らかにしている。しかし今回の結果は、奪い取るというネガティブな行動に関しては、その行動の意図とは関係なく、第三者に連鎖することを示した。今後さらに、相手に対して協力することも、相手から奪い取ることも可能な状況を想定した研究を進めていく。このようなネガティブな行動のメカニズムを知ることは、安定した協力社会の実現に貢献すると考えられる。
掲載論文
【題名】.(ネガティブな行動をとると負のアップストリーム互恵性が生じる)
【掲載誌】
【掲載日】 2023年7月5日
【DOI】10.1371/journal.pone.0288019
論文情報:【PLoS ONE】Individuals reciprocate negative actions revealing negative upstream reciprocity