愛知医科大学医学部産婦人科学講座、名古屋大学医学部附属病院、株式会社ツムラ研究開発本部ツムラ漢方研究所の共同研究チームは、婦人科症状の改善に使用される漢方薬「当帰芍薬散」が、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)モデルラットにおける卵巣形態異常を改善することを明らかにした。
PCOSは、月経異常や排卵障害による不妊、代謝障害を特徴とし、女性の約10%に認められる代表的な内分泌疾患である。多毛やニキビ、卵巣形態異常などを伴うことも多く、現在の治療は排卵誘発やホルモン療法など、対症療法が中心となっている。当帰芍薬散は、月経不順や月経困難、不妊症に対して適応とされる漢方薬であるが、PCOS症状改善における有用性や作用機序はこれまで明らかではなかった。
本研究では、PCOS様の卵巣形態異常を呈するラットモデルを作製し、当帰芍薬散を混餌投与してその効果を調べた。その結果、PCOSモデルラットの卵巣において異常卵胞が減少し、多嚢胞所見が改善した。また、骨形成タンパク質BMP4の発現量が抑制されていることに加え、排卵後に分泌され、着床や妊娠維持に必須な黄体ホルモンであるプロゲステロンの産生が増加する傾向も確認された。これらの結果から、当帰芍薬散がBMP4の発現抑制およびプロゲステロン産生促進を介して、卵巣機能の改善に寄与する可能性が示唆された。
本成果は、PCOS患者にみられる卵巣形態異常や性周期異常などの症状軽減に当帰芍薬散が役立つ可能性を示すものであり、対症療法が主流となっているPCOSの根本的治療を目指す新たな選択肢となることが期待される。今後は、PCOS患者のホルモン動態や代謝異常との関連、他治療薬との併用効果、至適投与量や投与期間などについて、さらなる検討を進める必要があるとしている。

