神戸大学の研究グループは、健康効果を最大化する「適度な運動」の強度を分子レベルで明らかにした。

 運動はさまざまな疾病の予防や改善に効果があることが知られる一方で、運動強度が低すぎると十分な効果が得られず、逆に高すぎると酸化ストレスなどを引き起こし、かえって悪影響を及ぼす恐れがある。しかし、「適度な運動」がどのような強度で、分子レベルで何が起きているのかはこれまで十分に明らかになっていなかった。

 そこで本研究では、運動の主たる標的臓器である骨格筋の分子応答に着目し、「適度な運動」を客観的かつ定量的に評価することを目指した。

 まず、マウスに強度を変えながら有酸素運動と筋力増強運動を行わせ、骨格筋の分子応答を解析した。その結果、有酸素運動では速度20m/分、筋力増強運動では体重120%の負荷が、酸化ストレスを引き起こさずに分子応答を最大化する最適な運動強度であることがわかった。

 8週間の継続トレーニングでも、これらの運動強度が、ミトコンドリア機能の向上(有酸素運動)や筋肥大(筋力増強運動)を最も効率的にもたらすことが確認された。

 次に、最適強度での運動時に骨格筋で生じる分子応答を網羅的に解析した結果、インスリンシグナル、FoxOシグナル、概日リズムなどの経路が協調的に調節されることが明らかになった。

 さらに、大規模薬剤データベースの探索から、パセリやタマネギに含まれる植物フラボノイド「アピゲニン」や、高血圧治療薬「ドキサゾシン」が、最適強度の運動時と類似した分子応答を誘導することを見出した。これらを運動と併用してマウスに投与すると、持久力の向上や握力の増強、骨量維持に寄与することが確認されたという。これらは、運動によって得られる効能を部分的に再現できる「運動模倣薬」の候補となる可能性があるとしている。

 今後は、マウスで得られた「適度な運動」の知見がヒトにも当てはまるか検証を進める必要がある。本研究成果は、運動が困難な高齢者や患者に対する新たな治療戦略の開発につながることが期待される。

論文情報:【Redox Biology】Multi-Omics reveals molecular signatures of moderate intensity exercise and identifies candidate exercise mimetics in mice

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