大学間競争を生き抜く定員1.5倍構想他

 少子化の進行に歯止めがかからない中ですが、本学ではより多くの学生に学びの選択肢を与えたいと考え、今後10年で学生を1.5倍にするという野心的な計画を温めています。実現すれば、学院経営の安定化の大きな力となるとも考えるからです。これまでも本学では、多くの大学が学生募集に苦戦する中、9年連続で志願者を増やしてきました。これに加え、これまで本学を選ぶことの少なかった理系志望者や女子学生などにも学ぶ学問領域が新たに提供できれば、大規模大学化もさほど困難ではないと考えています。併設する二つの高校の生徒の中には理系志望者もいますので、より求められる学部構成の検討を重ねていきたいと考えています。

 キャンパスのキャパシティについては、DX化の一層の進展でより柔軟に対応できるようになると考えています。授業ごとに、オンラインに適しているか対面に適しているか、あるいは対面とオンラインのハイブリッドがいいのかをきちんと見極め、それぞれの授業内容にふさわしい形態を確立していく。そのことでキャンパスの有効活用も可能になる。これは授業の質をさらに高めることにもつながり一石二鳥です。これまで、教室の収容定員の都合で「受けたいのに受けられない」授業もあったわけですし、それが続くことで、学生のモチベーションが低下する危険性もあります。「ポストコロナ」の時代には、リアルとオンライン、あるいはそのハイブリッド等、個々の学生のニーズに沿って、学びたいことが存分に学べる様な仕組作りを最優先にすべきだと考えます。

2022年4月に文学部と国際学部を設置

 このような展望の下に、2022年4月に国際教養学部を改組して文学部と国際学部を開設します。文学部については、「なぜ今、文学部?」という声が聞こえてきそうですが、新しいことをするにも、古いことを学ぶことが大事だというのは、どんな時代においても変わりません。振り返れば、本学は1966年、文学部と経済学部の2学部でスタートしました。加えて文学という学問体系が、長い伝統の中で完成されたものであるということも重要です。大学での学びを、具体的な「分野の中身を学ぶ」ことから、「ある学問体系を学ぶ」ことととらえなおせば、私自身の経験からも、文学研究は長い伝統に裏打ちされた恰好の方法です。完成度の高い学問体系と格闘することは、長い人生の中で別の学問を修める際にも、また様々な課題の克服にも、必ず役に立つものと信じています。

 国際学部については、すでに国際教養学部があり、その中には、今回の文学部の核になる国際日本学科もあるわけですが、今回はそれを全面改組し、まったく新しい学部を目指します。グローバル人材の育成という目的は変わりませんが、アプローチは大きく変えます。英語が話せることはグローバル人材の一スキルにすぎず、大事なことは、それをどのような形で既存の学問分野と結び付け、社会に有用な形で再定義できるかです。ポストコロナを視野に、本物に触れられるような質の高い学びを得られる留学先との関係構築にも努力を惜しみません。彼らがそこで自国の文化を思う存分語り、SDGsなど、世界の課題について語りあえる日が来るのを今から楽しみにしています。新たな2学部が、相乗効果を発揮し、次の時代を牽引する学部になることを期待しています。
 

受験生へのメッセージ

 変化の激しい時代において、大学時代に学んだことだけで、その後の人生をよりよく生きることは難しくなっています。このような状況で大切なことは、「内容を学ぶ」だけではなく「方法を学ぶ」ことです。経営や文学について学ぶだけでなく、そこで学んだ方法を他の分野の学び、あるいは少し飛躍するようですが、将来の仕事の中で出会う新しい課題の解決にも生かせるように学ぶのです。図書館の使い方に例えれば、図書館を単に本を読むための場所で終わらせるのではなく、様々な本の検索や資料の活用を覚える場とする。後者を続けていれば、探すべき本(情報)が見つからなくても困ることはありません。再度ふさわしい本(情報)を検索して見つければいいからです。

 加えて、これからは文系でもデータ・サイエンスについての素養も必要です。自身の専門性とITを掛け合わせることが必要なケースも出てくるでしょう。大学の教育もそれに合わせ、不断の改革が必要です。変化の激しい時代、予測不能な社会に備え、生涯にわたって学び続ける皆さんを、先進のICT教育、教育DXでサポートしたいと考えています。

 

追手門学院大学 学長

真銅 正宏先生

1988年3月 神戸大学大学院 文学研究科 国文学専攻修士課程修了
1992年3月 神戸大学大学院 文化学研究科 文化構造専攻博士課程単位取得後退学、
2016年9月 神戸大学 博士(文学)
2020年4月 追手門学院大学 学長就任、現在に至る。

 

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追手門学院大学

学門領域拡大×新キャンパス拡大。2023年4月、法学部※新設!

関西でも人気のエリア・北摂(大阪府茨木市)にキャンパスを置く文理総合大学。2019年に全ての新入生が学ぶ新キャンパス(茨木総持寺キャンパス)が誕生。2021年には、心理学部にAlを学ぶ理工系分野「人工知能・認知科学専攻」を、2022年には、国際学部と文学部の2[…]

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