2026年春、関西大学システム理工学部(数学科、物理・応用物理学科・機械工学科・電気電子情報工学科)に、5番目の学科となるグリーンエレクトロニクス工学科が開設される。社会のDXキーワード1、GXキーワード2推進を目指す国の「大学・高専等機能強化事業」※も活用。《2050年に温室効果ガス排出量を実質0に》という、世界共通の目標へ向け、グリーンエレクトロニクス工学を学んだGX(グリーントランスフォーメーション)人材の育成を目指す。新学科の特徴を、梶川嘉延システム理工学部長の話も交えて紹介する。
※《成長分野をけん引する大学・高専の機能強化に向けた基金による継続的支援)として、文部科学省が令和5年度から始めた事業。<学部再編等による特定成長分野(デジタル・グリーン等)への転換等>(支援1)と<高度情報専門人材の確保に向けた機能強化>(支援2)がある。関西大学の新学科は、令和5年度の初回公募で支援1に採択された。
【キーワード1】デジタルトランスフォーメーション:デジタル技術を活用して、ビジネスや社会を変革する取組。 GX(キーワード2)と相互に連携することで、より効果的な変革を促進すると期待されている
【キーワード2】グリーントランスフォーメーション:化石燃料に依存した経済・社会・産業構造を、再生可能エネルギーなどのクリーンエネルギー中心の構造に転換する取組。
どんな学科?――そもそもグリーンエレクトロニクスって?
グリーンエレクトロニクスとは、環境に優しいという意味での《グリーン》と、電気電子、情報を表す《エレクトロニクス》のこと。グリーンエレクロトニクス工学は、設計・製造・使用・リサイクルといった電子機器の全体において、AI/IoT・情報通信技術を駆使して消費電力を極力減らすなど、環境への影響を最小限に抑えることを目指す新しい分野。
新学科について梶川嘉延システム理工学部長は、「《グリーン》や《環境》について学ぶ学部・学科は多々あるが、そこに《エレクトロニクス)を結びつけている学科は例がないのではないか」と前置きしたうえで、「国内ではIT人材の不足がここ十年ほど叫ばれてきたが、半導体分野の人材不足も深刻。近年は国際情勢や経済安全保障の観点から、国内での半導体製造に再注力しようという機運も高まっており、生成AIの発展によって半導体市場がさらに拡大するとの予測もある【下図】ため、人材育成は急務。一方で消費電力の大幅な増加も危惧されることから、グリーンエレクトロニクス工学を学んだGX人材の育成も急務」、と新学科開設の意義を語る。
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どんなカリキュラム?—1学年62名という徹底した少人数教育で、環境意識を高め、実践的な学びで即戦力の人材を育成する
教育面での大きな特徴は、1学年62名という少人数制。環境意識を高めながら、実践的な技術を修得するという高い目標達成には欠かせないものと言えよう。
「研究室配属については4年次からと、3年かけて卒業研究のテーマを選ぶ点では他学科と同じだが、初年次からグリーンエレクトロニクスの概念、高い環境意識をもって4年間学ぶのが新しい点」と梶川学部長。
実践力も重視し、2年次から3年次にかけては、ほぼ毎週、クリーンルームで半導体の製造実習【下図】を行うが、これは「学部段では極めて珍しい試み」とも梶川学部長は語る。
さらに、1、2年次には基礎科目を用意し、数学や物理・応用物理の基礎を徹底的に身に付けさせる。
高効率の回路設計やその評価に必要なソフトウェア設計のために、プログラミング教育にも力を入れる。そしてここでも、入学者の多様性に配慮し、入学当初は初歩から始め、2年次から4年次にかけては、実習科目を配し、段階的に高度な力が身に付けられるようにする。
2年次から3年次にかけて学ぶ専門科目では、次の4本柱にそって半導体を中心に学び、かつ実験実習を行う。
1.デバイス物性:半導体の根本的な性質や仕組みを原子や電子のレベルから理解する。
2.装置・加工・計測・制御:半導体デバイスをどのようにして製造するかを学ぶ。
3.アナログ・デジタルの集積回路:製造したデバイスをハードウェアとしてどのように活用するかを考える。
4.数値計算・情報: 集積回路をソフトウェアとどう連携するかを学ぶ。

—その他のカリキュラムにも、少人数制ならではの特徴が
さらに、各年次で実習する半導体や電子部品などの製造について、その電力消費を極力抑えるために必要な新しい技術などについて、学外のゲストも交えたリレー講義で学ぶ。
産業界との連携も重視し、3年次の「産学連携PBL」では、企業が実際に抱える課題について、社員とともに考えその解決を目指す。また『グローバル人材育成プログラム』では、これからの技術者に求められるグローバルな共創、協業を学部段階で経験することができる※。
※2年次には、半導体製造で世界的に注目される台湾で3週間、中原大学のサマーキャンプに参加する。3年次には、ポーランドのグダニスク工科大学等で、一ヵ月間のラボインターンシップを行う。
以上、新学科の教育の特徴の一端を紹介したが、1学年62名という少人数教育をはじめ、学部段階での極めて珍しいクリーンルームでの実習など、まさに関西大学の伝統ある理工学教育の未来を先取りする学びになると言えそうだ。
クリーンルームで半導体の製造実習を行う
卒業後の進路も多彩
気になる卒業後の進路はどうだろう。
「すでに電気電子情報工学科や機械工学科は学部段階、大学院段階(修士課程)ともきわめて高い就職率を誇っていますから、その実績の下に、高い環境意識をもって、グリーンエレクトロニクス技術を身に付けたGX人材は、どんな分野でも引っ張りだこだと思います」と梶川学部長。「具体的には半導体メーカーはもちろん、今まさに社会を大きく変えようとしている生成AIを支えるデータセンター業界も、活躍が期待される大きな舞台。もちろん半導体製造機器メーカーおよび半導体周辺機器の部品メーカーや、それらを使う自動車、家電、さらには電子機器の制御に使われるソフトウェア開発に携わる企業なども考えられますね」とも。
これから進路を考える高校生には、「何かに興味をもって、それを知るために夢中になる体験をしておくことが大事」とアドバイスを送るとともに、「新学科は、環境とエレクトロニクスの両方に興味のある人はもちろん、いずれか一方にだけ興味ある人も、学ぶ楽しさや探究する喜びを十分に味わえると思います」と語ってくれた。
関西大学 システム理工学部 部長
梶川 嘉延教授
