私たちの身の回りには、答えのない疑問や、なぜそうなるのか理解できない「不思議」が満ちています。高校生である皆さんも、「どうして?」という純粋な問いから探究活動を始めているのではないでしょうか。
大学や研究機関で行われる専門的な研究も、実は同じです。複雑な理論やデータ解析の裏側には、研究者自身の心に火をつけた、根源的な「問い」が必ず存在します。しかし、現代の学術の世界では、短期的な成果や分かりやすい肩書きが重視されがちで、その純粋な「問い」が分野の壁や慣習に阻まれて磨かれにくい状況にあると言います。

そんな中、京都大学では9年前から「京大100人論文」という斬新な研究ポスター発表大会を実施しています。2025年は11月上旬に開催し、120件のポスターを発表、来場者はのべ1300人でした!
この企画が特異的なのは、研究者の「問い」の持つ力を信じ、それを鍛え上げるための仕掛けがたくさん詰まっている点にあり、最大の特徴は「無記名制(匿名制)」にあります。
来場者はもちろん、ポスターを掲示する研究者自身も、名前、所属、職位といった「肩書き」を一切記載しません。研究発表の常識を覆すこのルールは、「この分野の権威だから」「あの有名大学の先生だから」といった先入観を完全に排除します。その結果、参加者はポスターの内容、つまり「問い(研究テーマ)」そのものに集中し、純粋に「本音」で向き合うことになります。
さらにユニークなのは、ポスターの形式です。通常、研究ポスターは複雑なグラフや図表、自由なデザインで飾られますが、「100人論文」では、以下の三つの問いに対して、それぞれ300字程度で簡潔に回答するだけです。
1. 私が追っている不思議
2. これまでやってきたこと
3. みなに問いたいこと
あえて図やグラフを排除することで、内容ではなく視覚的な情報で分野を判別してしまうことを排除しているのです。これにより、分野を超えた対話が生まれやすくなります。 「100人論文」の来場者は、研究者だけでなく、企業人、行政関係者、そして中高生や教諭など、実に多様で、しかも全国から集まります。

高校生の皆さんにとって、この大会は非常に貴重な経験となること請け合いです。大学の研究者や社会のプロフェッショナルが本音で議論する場に、一切のハンデなく参加できるからです。皆さんは来場者として、ポスターを見て感じた疑問や率直な感想を、無記名でコメント付箋に書き込み、ポスターに貼り付けます。相手が大学教授であろうと、「誰が書いたか」を気にせず、その研究テーマに対して純粋に、「ここが面白い」「ここが分かりにくい」「こんな疑問が湧いた」という本音をぶつけられますよ!
2026年も秋ぐらいに開催予定です。ぜひとも京都大学学際融合教育研究推進センターのXやメールマガジンに登録してもらい、情報をゲットしてください。
【京都大学 学際融合教育研究推進センター】
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京都大学 学際融合教育研究推進センター 准教授
宮野 公樹先生
1973年石川県生まれ。2010~14年文部科学省研究振興局学術調査官も務める。2011-2014年総長学事補佐。専門は学問論、大学論、科学技術社会論。日本金属学会論文賞他受賞多数。著書『研究を深める5つの問い』(講談社)など。
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